原子番号58:セリウムの特徴や性質

ランタノイド

原子番号58はセリウム、元素記号はCeです。元素名については、セリウムが発見される前に見つかった小惑星「セレス」にちなんで命名されています。セレスとはローマ神話に出てくる穀物の女神の名前です。

常温常圧の状態では灰色がかった銀白色の金属で、面心立方格子構造の安定した結晶構造をしています。ですが、730℃以上になると体心立法格子構造、低温では六方最密充填構造、-150℃以下で面心立方格子構造と温度によって異なる安定した結晶構造を持ちます。

空気中では酸化しやすく、置いておくと酸化セリウムに変化します。セリウムを加熱すると160℃で発火します。熱水には反応しますが、水にはゆっくりと溶け、酸やアンモニアには溶けやすいという特徴があります。希土類元素(レアアース)の中では、最も存在量が多いことがわかっています。

セリウムの鉱石として主なものはバストネス石です。スウェーデンのバストネス鉱山から採れるため、そう呼ばれています。1803年にバストネス鉱山で採れた石の中からイットリウム鉱石を探していたスウェーデンの科学者2名が偶然に未知の酸化物を見出したのが、セリウムです。さらに同じタイミングでドイツの化学者1名が、バストネス鉱山で新しい元素を探していて見事に発見しました。その際はテールオクロイトと命名していましたが、この2つの発見が同じ元素を表していたことがわかり、学会にてセリウムという名前が命名されました。

同じ年に全く別の人々によって発見されたセリウムは、第一発見者をめぐって国同士の論争を起こしました。新元素に関して国家間の論争が起きたのはセリウムが初めてのことでした。

セリウムは酸化しやすいという特徴から、酸化セリウムがよく利用されます。

酸化セリウムの代表的な用途の一つが「研磨剤」としての利用です。酸化セリウムはガラスや水晶・石英などの研磨に使われます。特にガラスの研磨ではガラスの表面を物理的に削るだけでなく、化学反応を起こして科学的にも削られていることがわかっています。

さらに酸化セリウムには紫外線を協力に吸収する性質があります。この性質を利用して、サングラスや眼鏡のレンズ・自動車の窓などに使われるガラスに酸化セリウムが混ぜこまれています。眼鏡のレンズや自動車の窓ガラスが少し黄色味を帯びて見えることがあると思いますが、この黄色がかって見えるのが、酸化セリウムの影響です。近年、この酸化セリウムの黄色味を消す技術が開発されたため、日焼け防止用の化粧品に応用する研究開発が進められています。

セリウムと鉄の合金はライター用の発火石として利用されています。また、合金の腐食防止のためにアルミニウム合金やマグネシウム合金に添加剤として使われています。