原子番号82:鉛の特徴や性質

卑金属

原子番号82は鉛、元素記号はPbです。元素記号はラテン語で「柔らかい金属」と言う意味のある単語(plumbum)からつけられています。元々は柔らかい金属全般を表す言葉で、鉛をplumbum rigrum(黒く柔らかい金属)、スズをplumbum candidum(明るく柔らかい金属)と呼んでいたようです。日本語での鉛という名称は、「生り(なまり)=柔らかい金属」というところからきているという説があります。

常温常圧の状態では純粋な鉛は光沢があり青みを帯びた白い色をした金属で、面心立方構造の安定した結晶構造をしています。空気中に置いておくと湿気と酸化で表面に酸化被膜が作られ、光沢がなくなります。被膜によって内部が保護されるため、腐食に強いという特徴があります。また、水にも溶けないため水中でも腐食されにくいです。

地殻中にはあまり存在していませんが、硫化鉱物として存在しており採掘・製錬が比較的簡単なことから亜鉛と同じように安価な金属として売買されています。

鉛は紀元前6400年の新石器時代には利用されていたことがわかっており、旧約聖書にも登場するほど、人類と深く長くかかわってきました。加工のしやすさと腐食性の高さからローマ帝国の水道管に使われたり、密度の高さから釣りの重りなどとして利用されてきました。近年まで水道管・はんだ・おしろい・ガソリン・塗料など身近な用途で大量に使用されてきましたが、現代になり鉛の毒性が重視されたことから、用途が限られるようになっています。

現在は鉛蓄電池の電極、合金、鉛ガラス(光学レンズ・クリスタルガラス)、美術工芸品(ステンドグラスの縁)、防音・制振シート・免震用ダンパー、銃弾、電子材料などとして使われます。

無機鉛の化合物は水に溶けにくいため、急性中毒を起こすことは稀です。ですが、脂溶性の有機鉛は細胞膜をも通過して、直接体内に取り込まれてしまいます。鉛は自然な状態の食べ物にもわずかですが含まれており、私たちは常に摂取していることになります。微量であれば尿として排出されるため、過度な心配は不要ですが摂取量には要注意です。

鉛は、生物の体表や消化器官に接触・定着すると様々な中毒症状を起こします。その症状は腹痛・王都・伸筋麻痺・感覚異常症などです。また、血液に作用すると溶結性貧血やヘム合成系の障害を起こしたり、免疫系の抑制・腎臓に影響が出ることもわかっています。

古代ローマの時代には貴族の間で鉛製のコップでワインを飲むことが流行しました。このことから、鉛による中毒患者が多く出たとされています。17世紀ごろには鉛中毒が注目されましたが、ワインに酢酸鉛を添加することで甘みが増すということで使用されていたのが現状です。

現在は鉛中毒がキレート剤によって治療できることがわかっており、過度に心配する必要はありません。