原子番号67:ホルミウムの特徴や性質

ランタノイド

原子番号67はホルミウム、元素記号はHoです。元素名はスウェーデンの首都・ストックホルムの古い呼び名であるラテン語のHolmiaにちなんで命名されました。1879年にスウェーデンの化学者・クレーペが純粋なエルビウムと考えられていた物質から新しい元素を2つ発見したうちの1つがホルミウムです。(もう1つはツリウムを命名されました)

常温常圧の状態では銀白色の金属で、六方最密充填構造の安定した構造をしています。融点は1461℃、沸点は2600℃とされていますが、異なる実験値の報告もあるようです。空気中に置いておくだけで表面が酸化し、高温になると全体が燃えて酸化物に変化します。他のレアアースと同様に水にゆっくりと溶け、酸にはすぐに溶ける、ハロゲンと反応するという特徴を持っています。レアアースの中では最大の磁気モーメントを持つというのがホルミウムの特性といえます。

ホルミウムが採れる鉱石としては、ゼノタイムやフェルグソン石・イットリア石などがあります。ですがホルミウムは稀少で高価なため、特定の用途以外で使われることがなく一般的な元素ではありません。

ホルミウムの主な用途の1つと言えるのが、YAGレーザーへの添加材料です。ホルミウムを添加したYAGレーザーは通常のYAGレーザーとは異なって医療分野(手術)で活躍しています。ホルミウムを使ったYAGレーザーは薄い膜を出血することなく切ることができたり、硬い組織(結石など)を破砕することができます。また組織の深い部分にも熱の影響を強く与えることなく切ったり、止血をすることができることから前立腺の手術・尿路結石の破砕などに使用されています。

ホルミウムのもう1つの主な用途が、着色ガラスです。ガラスにホルミウムの酸化物を加えるとガラスが淡い黄色になり、黄色っぽい緑色の光が吸収されるようになります。ホルミウムを混ぜたガラスに吸収される光の波長(色彩)は非常に限られており、少しでも波長(色彩)がずれてしまうと、光の吸収が行われなくなってしまいます。そのため、光の波長を分析する装置にも、光の波長を調節するための基準物質としてホルミウムの酸化物を混ぜた着色ガラスが使用されています。

ホルミウム以外のレアアースもそれらの酸化物をガラスに混ぜることで、いろいろな色をしたガラス(着色ガラス)を作ることができます。プラセオジムの場合は淡い緑色のガラスになり、青い色の光がガラスに吸収されるようになります。ネオジムの場合は薄いラベンダー色のガラスになり、黄色の光が吸収されるようになります。また、酸化鉄で青みを帯びてしまう板ガラスの青みを消すためにもネオジムが添加されることがあります。エルビウムの場合はうすいピンク色のガラスになり、青っぽい緑色の光が吸収されるようになります。ランタンやセリウムの場合はガラスに色はつかず無色になりますが、紫外線を吸収するようになります。