原子番号74:タングステンの特徴や性質

遷移元素

原子番号74はタングステン、元素記号はWです。元素名(tungsten)は、スウェーデン語・デンマーク語・ノルウェー語で「重い石」を意味する単語です。元素記号のWはドイツ語(Wolfram)からつけられました。タングステンの鉱石である鉄マンガン重石をWolframitと表記しますが、これはタングステン鉱石がスズ鉱石に混じることでスズの精製を阻害してしまうことから、スズをオオカミのようにむさぼり食べるということでWolfという言葉が使われています。

常温常圧の状態では銀灰色をした金属で体心立法構造の安定した結晶構造をしています。とても硬くて重く、金属の中では融点が最も高い(3422℃)という性質を持っています。

タングステンの産出については中国が1位で世界の産出量の8割以上を占めています。中国以外ではロシア・カナダ・オーストリアなどが主な産出国となっています。

タングステンは融点が高いこと、金属の中では比較的大きな電気抵抗を持つこと、細かく加工ができることを利用して、色々なものに使われています。特に代表的なものが電球のフィラメントとして利用です。ですが、近年はLEDライドの普及が盛んなため、フィラメントとしての利用は減っています。

炭化タングステンとコバルトの合金は超硬合金の中でも最も優れた特性を持っており、高級な切削用工具に使われています。タングステンと鉄の合金はドリルや耐摩耗工具などにも利用されています。

また、比重が大きく硬度もあることから、砲弾(特に対戦車・対艦船用の徹甲弾)として使われることもあります。比重の重さは金に近いため、金の延べ板のフェイクや偽造に使われることもあります。狩猟用の弾には従来鉛を使っていましたが、動物への鉛害を防止するために狩猟用の散弾銃の弾や釣りの重りとして、鉛の代わりにタングステンを使おうとする動きもあります。ですが、コストや加工の技術に問題があり残念ながらあまり普及はしていません。

他にも電子顕微鏡・電子線描画装置の電子ビームの発生源、生体試料の解剖用具(タングステン針)、真空蒸着による薄膜形成の際に薄膜の素材になる金属を溶かするつぼ、などの用途で利用されています。

身近なところでは、印鑑にもなっています。ダイヤモンドの次に硬い金属、ということを売り文句に丈夫さをアピールしています。さらに、タングステンを極細の繊維状にして手袋に編み込むことで、耐切創手袋が作られています。製造業・工事業・自動車整備業などの現場で、職人の手を事故やケガから守っています。また、指輪や腕時計などのアクセサリーにも利用されています。傷がつきにくく変形もしにくいことで注目度は上がっていますが、レアアースの一つですから価格がそれなりのものになります。ダーツの持つ部分の素材の一部としてもタングステンが使われているものがあります。