原子番号77:イリジウムの特徴や性質

遷移元素

原子番号77はイリジウム。元素記号はIrです。元素名については、イリジウムの化合物の色が色々な色調に変化したことから、ギリシャ神話の虹の女神・イリスにちなんで命名されました。

常温常圧の状態では面心立方構造の安定した結晶構造をしています。酸・アルカリには溶けず、王水でも常温では溶けないという特徴があります(粉末になると王水に少し溶けます)。高温の状況ではフッ素・塩素と反応します。

純粋なイリジウムは展延性に乏しく、とても硬くてもろいため、加工に適していません。他の白金族元素と合金にして使うことで、相手の金属の硬度を高めることに用いられます。特に白金とイリジウムを9:1の割合で合金にしたものは硬度が高く、メートル原器やグラム原器として使われます。

メートル原器については1960年に白金とイリジウムの合金を使ったものから、真空の中で光が一定時間に進む距離を定義にすることになり、役目を終えています。メートル原器として使われていた合金のレプリカは30本作られ、そのうちの1本は日本(産業技術総合研究所)に保管されています。これは国の重要文化財となっています。

産出については、天然の白金から分離されるほか、天然に存在するオスミウムとの合金から分離します。地球内部にあるマントルには地殻よりも多くのイリジウムが含まれていることがわかっています。

白亜紀と古第三紀の境目に当たる地層部分には多くのイリジウムが含まれた層が存在しています。地表にはイリジウムが少ないことから、隕石で得られたものか、地殻の深い部分のものが出てきた可能性が考えられます。ちょうど恐竜が絶滅したとされる時代と一致することから、地球に隕石が衝突した証拠であると考えられる理由の一つとなっています。

産出国としては南アフリカ・ロシア・北米が挙げられます。特に南アフリカはイリジウムの約95%を産出しています。

イリジウムを使った合金は硬度が高くなり、融点も上がることから耐熱性・耐摩耗性が必要とされる現場で使われます。耐熱性が必要とされるのは、工業用のるつぼや飛行機・自動車などのエンジンの点火プラグの電極などです。耐摩耗性が必要とされるのは、万年筆のペン先です。白金との合金は指輪・ネックレスといった宝飾品にも使われます。また、人工的に作られた放射性同位体のイリジウム192は非破壊検査をする際の線源として使われています。

通信衛星と直接通話できるシステムを利用している衛星電話に「イリジウム携帯電話」がありますが、この携帯電話にはイリジウムが使われていません。イリジウム携帯電話の名称は、衛星電話が計画されていた時に使う衛星の数が77個だったため原子番号にちなんで命名されました。実際には66個の衛星が使われています。