原子番号75はレニウム、元素記号はReです。元素名については、発見者であるドイツの化学者ノダック、タッケ、ベルクによってドイツ国内に流れるライン川のラテン名にちなんで命名されました。レニウムが発見されたのは1925年で、これは天然元素として2番目に遅く発見されたものとなっています。
常温常圧の状態では銀灰色をした金属で、六方最密充填構造の安定した結晶構造をしています。フッ化水素酸・塩酸には溶けませんが、硝酸・熱濃硫酸といった酸化力のある酸や過酸化水素・臭素水には溶けるという特徴を持っています。
地殻中に存在している量が少なく、分離も困難なことから世界中での生産量も年間50トン前後となっています。レニウムが採れる鉱石は、森部でないと・コロンバイト・タンタライトなどがあります。銅の精錬中に出る残りかすの中にも微量にレニウムが含まれることがあり、イオン交換樹脂によって分離することができます。
主な生産国はチリで世界の半分以上を生産しています。他にはアメリカ・ポーランド・ウズベキスタン・カザフスタン・ロシアなどが生産国に挙げられます。
レニウムを多く含む鉱石は長らく発見されていませんでしたが、1991年にはロシアの火山学者が千島列島・択捉島にあるモヨロ火山で黒く輝く鉱物を採取、それがレニウムと硫黄で構成された鉱物であることがわかりました。択捉島は日本の領土ですがロシアが実効支配しており、また発見者がロシア人で鉱物委員会に申請をせずに科学雑誌に発表をしたため、名前もつかない鉱物として扱われています。この鉱石は、ほぼ純粋な硫化レニウムの組成を持った鉱物だけに日本の鉱物学者たちは複雑な思いを持っています。
レニウムはドイツ人化学者が発見したことになっていますが、それ以前に日本の科学者が発見していたかもしれないという事実があります。というのも、1906年にロンドンに留学していた小川正孝が43番元素を発見したと発表し「ニッポニウム」と名付けていました。ところが、別の化学者による確認ができなかったため、間違いだとされてしまいました。後に小川の研究内容から計算ミスが見つかり、その後の調査で小川が発見したのが43番元素ではなく75番元素だったことが判明しました。もし、計算ミスがなければ75番元素は小川が発見者となり「ニッポニウム」という名前になっていたと考えられます。
レニウムは融点が3100℃と高いため、合金の材料として利用されています。ニッケルとレニウムの合金は耐熱性が必要なジェットエンジンのタービンブレードなどの材料に使われてます。タングステンとレニウムの合金はフィラメント・電子部品・航空宇宙用部品などに使われます。身近なところでは、ボールペンなどのペン先にも利用されています。