原子番号62:サマリウムの特徴や性質

ランタノイド

原子番号62はサマリウム、元素記号はSmです。元素名はサマルスキー石から発見されたことに由来して命名されました。サマルスキー石自体は鉱物の発見者のワシーリー・サマルスキー・ビホヴェッツというロシアの鉱山技師の名前から命名されており、元素名として人命が由来となったのはサマリウムが初めてとなりました。

常温常圧の状態では銀白色のやわらかい金属で、三方晶系の安定構造をしています。空気中に置いておくことで徐々に酸化し、表面に酸化被膜を作り出します。150℃になると自然発火するため、空気中の酸素や湿気と反応しやすい箔・粉末状になったサマリウムは不活性ガス雰囲気の中で保存されます。

地球の地殻中には元素としては40番目に多く存在しているとされており、その量はスズよりも豊富で約200万トンと考えられています。ですが、自然界ではサマリウム単体としての産出はなく、モナズ石・バストネサイト・セル石・ガドリン石・サマルスキー石などの鉱物の中に含まれています。これらの鉱石の多くが中国・アメリカ・ブラジル・インド・スリランカ・オーストラリアに存在しており、主な生産国は中国です。

純度の高いサマリウムはイオン交換法・溶媒抽出法・電気化学的析出法などで単離されますが、これらの方法は近年発見されました。金属サマリウムは塩化サマリウムを塩化ナトリウムや塩化カルシウムと溶融塩電解することでも得ることができます。さらに酸化サマリウムを金属ランタンで還元させることでも得られます。

サマリウムの一番の用途として挙げられるのが、サマリウムコバルト磁石です。鉄で作られるフェライト磁石の1000倍もの磁力を持っており、ネオジム磁石が開発されるまでは最強の磁石として知られていました。ネオジム磁石は磁力の面でサマリウム系磁石より優れていますし安価ですが、鉄を含んでいる分錆びやすく熱に弱い(300~400℃で磁力がなくなる)という弱点があります。その点、サマリウム系磁石は高温の状況でも使用できる(約700℃まで使える)強力な磁石ということで一定の需要があります。

サマリウム系磁石は高性能なモーター・イヤホン・スピーカー・マイク・ハイブリッド車のモーター・携帯電話の振動モーター・健康器具などに使用されており、直接目にするものではありませんが生活の中で使われている身近な存在となっています。

サマリウムは人体の中に微量ですが、存在しています(約50μg)。主に肝臓・腎臓にあり、血液中にも含まれています。ですが、生物学的に役割を持っていることは証明されていません。一部の植物や野菜からサマリウム塩という形で体内に摂取されますが、そのほとんどは排出されます。