原子番号86:ラドンの特徴や性質

希ガス

原子番号86はラドン、元素記号はRnです。元素名はラドンが生まれる元になる気体・ラジウムを元に命名されました。キュリー夫妻がラジウムに接した大気が放射性を持つことを発見していましたが、1900年にドイツの物理学者ドルンが元素であることを発見、既にイギリスで活躍していた化学者のラザフォードとソディがトリウムから発見していたものと同じであることがわかりました。

ラドンは常温常圧の状態では無味無臭・無色の気体なので、人間が近くすることはできません。ですが、-71.15℃まで冷却して固体にすると黄色から赤橙色の放射線ルミネセンスを発します。さらに結露することで液体になると青から薄紫色に発光します。水に溶けやすく、他の希ガスと比較するとキセノンの約2倍、クリプトンの約4倍、アルゴンの約8倍、ネオン・ヘリウムの約20倍にもなります。有機溶剤・プラスチックには水よりも約50倍も溶けることがわかっています。

地下の深いところにあるウランがマグマの上昇とともに地表に出て、マグマがゆっくりと固まることで花崗岩や長石・石英・雲母などの結晶の間にたまります。その地層が風化することで結晶の間にたまったウランが解放され、ウラン・ラジウム・ラドンなどが水中に溶けだして新たに濃度の高い地層ができます。

ラドンは気体として呼吸器に取り込むことで、肺胞に付着すると放射線障害を起こしやすくなります。このため、ウラン鉱山で労働する人には放射線障害が発生しやすく、発がん性のリスクも高くなります。また、石で作られた家・地下室などは空気中のラドン濃度が高くなる場合があるため、濃度調査が重要になってきます。

ラドンの吸入については、喫煙に次いで肺がんのリスクが高いとされています。このことは世界保健機構(WHO)によっても、2005年に警告が出されています。ラドンの濃度と肺がんのリスクには大きな関係があることがわかっており、ラドンには安全量というものが存在せず、少量であっても被爆することでがんになる危険性があるとされています。

欧米諸国には石造りの家屋が多く、密閉性が高いと室内のランドン濃度が高まる危険性があります。室内でのラドンの吸入における肺がんの発生は年間で約1万5000人と考えられています。

日本国内では「ラドン温泉」というラドンを含んだ温泉が有名です。鳥取県にある三朝温泉は高濃度のラドンを含んでおり、温泉地の周辺では屋外でも近隣の農村地帯に比べ2.4倍にもなるラドンが観測されます。しかし、三朝温泉周辺の住民は日常的に空気中のラドンを吸入したり、ラドンを含んだ温泉水を飲用していますが肺がん・胃がん・大腸がんの発生が少ないこともわかっています。

温泉中のラドンは皮膚から吸収されやすいのですが、ラドン温泉への入浴により強直性脊椎炎・リュウマチ性慢性多発性関節炎・変形性関節症・喘息・アトピー性皮膚炎などに効果があることがわかっています。