原子番号68:エルビウムの特徴や性質

ランタノイド

原子番号68はエルビウム、元素記号はErです。元素名はエルビウムが採れる鉱石・イットリア鉱石の産出地であるスウェーデンの都市・イッテルビーにちなんでつけられました。イッテルビーからはエルビウムだけでなくイットリウム・イッテルビウム・テルビウムの4つの元素が発見されており、どの元素も地名であるイッテルビーにちなんで元素名が命名されています。

1843年にイットリウムの酸化物から2つのレアアースが発見され、それぞれテルビウム・エルビウムと名付けられました。ですが、1878年にエルビウムと思われていた物質からイッテルビウムが発見され、さらに1879年にはスカンジウムが発見されました。同じ1879年には、エルビウムと思われていた物質からホルミウムとツリウムが同時に発見されます。最終的には初めてイットリウムが発見された1794年から100年以上の歳月を経て、9種類のレアアースが見つけ出されました。

常温常圧の状態では銀白色のやわらかい金属で、六方最密充填構造の安定した結晶構造をしています。常温で常磁性を持っています。エルビウムが採れる鉱石はフェルグソン石・ゼノタイム・イットリア石です。

エルビウムには光を増幅させる性質があり、光ファイバーを利用した光通信に利用されています。光ファイバーは主に石英ガラスで作られていますが、光がファイバー中を進む間に光の強度が弱まってしまうという弱点がありました。そのため、従来は光信号を一旦電気信号へと変換し、強度を増した電気信号を送信して再度光信号に変換をして届けるということが行われていました。この方法では電気信号でノイズも発生してしまい、光の強度を増幅させることが課題となっていました。研究の結果、光ファイバーにエルビウムを含ませることで、光を10000倍以上も増幅可能になることがわかったのです。いまや、エルビウムは光ファイバーを利用した高速通信では不可欠なものとなっています。

エルビウムはガラスに添加することでピンク色を付けることができるため、ガラス着色にも利用されます。

YAGレーザーにエルビウムを加えた、エルビウムYAGレーザーは医療業界で活躍をしています。医療業界ではこれまで炭酸ガスレーザーやネオジムYAGレーザーが使われてきました。ですが、炭酸ガスレーザーは熱によって周りの健康な組織まで凝固させてしまうという欠点がありました。ネオジムYAGレーザーも深部まで到達してしまうため内部拡散が起きてしまったり、熱による凝固や体内の水分に吸収されにくいという欠点がありました。エルビウムYAGレーザーは接触した部分の表面の水分に反応してピンポイントで蒸散させ、健康な組織の熱凝固を最小限にすることがわかっています。

エルビウムYAGレーザーは歯科治療や美容治療(シミ・ほくろなど)において痛みや後遺症が少ない治療として利用されています。