原子番号87:フランシウムの特徴や性質

アルカリ金属

原子番号87はフランシウム、元素記号はFrです。元素名については、フランスにちなんで命名されました。

アルカリ金属元素の一つで、原子番号が一番大きなものになります。フランシウムはアスタチンと同様に安定した同位体が存在せず、すぐに崩壊してしまうためあまり研究が進んでいません。ウランやトリウムの鉱石内で生成と崩壊を繰り返しているため、存在量はとても少なくアスタチンに次いで地殻中の含有量が少ない元素と言われています。

地球の地殻中には20~30gほどのフランシウム223が存在しています。フランシウムの他の同位体はすべて人工的に作られたものとなります。フランシウムの同位体の中でも一番半減期が長いのがフランシウム223ですが、その半減期はわずか22分です。天然で存在が確認されている元素のうち、寿命が一番短い元素です。そのため、化学的・物理的な性質はよくわかっていません。フランシウムは崩壊する過程でアスタチン・ラジウム・ラドンへと変化をしていく、放射性が強い金属です。

自然界に存在するフランシウムはアクニチウムの崩壊によって生産されるので、ウランやトリウムの鉱石中に少しだけ含有されています。その量があまりにも少ないため、これまでに純粋なフランシウムを単体で取り出すことに成功した化学者はいません。可視光で写真を撮られたこともないため、想像の域を出ませんが単体で室温に置くと、液体で銀灰色に光る金属であろうと予測されています。

フランシウムは1939年、フランスの物理学者・ペレーがキュリー研究所にて発見しました。しかしながら、原子番号87の元素があると考えられたのは1870年でした。この約70年の間に世界各国の化学者がフランシウムの発見を発表しましたが、のちに別の物質だったことが判明しています。

まずは1925年にソビエトの化学者がフランシウムを発見したと主張しました。ですが、サンプル品から出ていた弱い放射能はカリウムの放射性同位体によるものでした。続いて1926年にイギリスの化学者が、1930年にはアメリカの化学者が原子番号87の元素を発見したと発表しましたが、どちらも違っていました。さらに1936年にルーマニアの化学者がポルックス石の分析を行い、原子番号87の元素を発見したとしましたが、他の学者によって否定されたのです。

自然界で発見された元素の中ではフランシウムが最後となっており、1940年以降に発見された元素はすべて合成されたものとなっています。フランシウムの不安定さゆえに、実用的な用途はまだなく、生物学・原子構造の分野において研究目的に使われるだけとなっています。過去にはがんの診断補助に使われることが研究されていましたが、実用的でないことがわかり研究が終わりました。