原子番号30:亜鉛の特徴や性質

遷移元素

元素番号30は亜鉛、元素記号はZnです。亜鉛の表面が滑らかでなく、櫛の歯(Zinken)のようになっていたことから、Zinkと呼ばれるようになり、元素記号のもとになりました。日本語の「亜鉛」という名称は、鉛に色・形が似ていたことから「亜鉛」と呼ばれるようになったと言われています。(亜の字には「次の」「別の」といった意味があります)

常温常圧の状態では、六方最密充填構造の結晶をもった光沢のある青みを帯びた銀白色の金属です。約100~150℃に熱した時のみ、展性・延性が高まるという特徴を持っていますが、その他の温度帯の時には脆いという特徴もあります。

亜鉛は地球上の全元素中24番目に多く存在しています。亜鉛だけの鉱石や鉱山があるわけではなく、銅や鉛の鉱石の中に含まれており銅・鉛を製錬する際に一緒に産出されます。酸化物よりも硫化物を形成しやすいという性質があります。

地球上には19~28億トンの亜鉛が資源としてあると考えられています。大きな鉱床としてはオーストラリア・カナダ・アメリカにありますがイランの埋蔵量が最も多いと言われています。

人類は紀元前4000年ころには銅と亜鉛の合金・黄銅(真鍮)を利用してきました。古代ギリシア人による、キプロス産の亜鉛化合物についての記述も残っています。現在のルーマニアに位置する場所に住んでいた、ダキア人は亜鉛を金属として精錬する技術を有しており、それとは別のインドでも同じように金属亜鉛を製錬する技術が発達していたようです。

銅との合金(真鍮)・銅とニッケルとの合金(洋白)など、合金として幅広く利用されています。また、顔料・化粧品・医薬品としても利用されています。マンガン電池の内部では負極材料や電解液として、アルカリ電池・空気亜鉛電池の内部では負極材料としても使用されています。また、メッキ加工により鋼材の防食効果を高めることができます。薄い鉄板に亜鉛のメッキを施したものは「トタン」と呼ばれ、いろいろなシーンで役立っています。

人体にとってミネラルとしての亜鉛は必須ミネラルの1つとしてとても重要です。成人の体内には約2gの亜鉛があると言われており、その多くが骨・肝臓・腎臓・筋肉に存在しています。味覚を正常に保つために役立っており、皮膚や粘膜の状態をよいものに保つ役割を持っています。

亜鉛が不足することで味覚障害が起きることがわかっていますが、他にも貧血・食欲不振・免疫力の低下・神経感覚の障害なども起きるようです。ですが、過剰に摂取してしまうと前立腺がんのリスクが増えたり、銅の吸収が阻害されることによる銅欠乏・吐き気・嘔吐腎障害・免疫障害などを起こす恐れもあります。

養殖の牡蠣やうなぎのかば焼きには多くの亜鉛が含まれているので、食べすぎには注意が必要です。