原子番号48:カドミウムの特徴や性質

遷移元素

原子記号48はカドミウム、元素記号はCdです。元素名はギリシャ語で菱亜鉛鉱を意味する言葉が由来となって命名されました。

亜鉛族元素の一つで、常温常圧の状態では銀白色をした柔らかく展性のある金属で安定した六方最密充填構造をしています。亜鉛と似ており産出も亜鉛鉱と常に一緒で、亜鉛を製錬する際に回収されます。錆びにくいというとくちょうがあり、美しい金属光沢をもっていますが湿気が多いところでは徐々に酸化し、灰色となって光沢を失っていきます。

カドミウムは人体の体重1kgあたりに約0.7mg含まれていると考えられていますが、人体にとっては有害です。体内に入ったカドミウムは約30年にわたり残留すると言われており、長期間にわたって暴露されることで腎臓の機能に障害が生じ、骨が侵されることがわかっています。

日本では1910~1970年代前半にかけて、現在の富山市において岐阜県の鉱山の精錬によって排水された未処理水が原因で神通川下流域の住民にイタイイタイ病が多発しました。初めは多発性近位尿細管機能異常症を示しますが、進行することで骨量が減少し筋力低下がみられるようになります。さらなる進行で全身の様々な場所に運動痛が現れ、最終的にはくしゃみや腕を持ち上げられるだけで骨折してしまうようになります。患者が出始めた当初は原因もわからず、風土病・業病と考えられておりイタイイタイ病という名前で呼ばれ始めたのは1955年のことです。

カドミウムによる慢性毒性としては肺気腫・腎障害・タンパク尿が見られます。近年は発がん性物質の一つとしても知られています。

カドミウムの産出は亜鉛とともに行われています。人体への多大な影響が知られず、郊外の知識も薄かった時代には亜鉛を製錬する中でカドミウムが環境に放出されていました。放出されたカドミウム汚染水は下流域の土壌に蓄積され、その土壌が酸化するとイオンとして溶けだして農作物に吸収されて人体に取り込まれました。日本の土壌はカドミウムが溶けやすい中性から酸性であり、食事によって毎日約26μg摂取していると考えられています。

カドミウムの毒性がわかっている現在は、日本では食物の含有基準が設けられており基準値以上のカドミウムが含まれたものは流通しないようになっています。

カドミウムの用途としては、ウッドメタルの成分材料・顔料・ニッカド電池の電極など工業製品に利用されています。また、中性子を吸収する性質があることから原子炉の制御用の材料にも使われています。メッキの材料としても自動車業界では長く使われており、1960年代までのアメリカ車のエンジンルームではよく見られていました。

近年ではカドミウムの毒性の方が重要視されており、使用・使用された製品の輸入などが厳しくチェックされるようになっています。