原子番号23はバナジウム、元素記号はVです。元素名については、1801年に発見された後につけられた名称がいくつかありましたが、何度かの改名を経て、バナジウムになりました。バナジウムという名前はスカンジナビア神話の女神「バナジス」にちなんでつけられています。バナジスは愛と美の女神ですが、バナジウムがとても美しい様々な色に着色されることに合わせて選ばれています。
常温常圧の状態では灰色がかった銀白色の金属で、展延性がある柔らかさを持っています。結晶は体心立方格子で、酸やアルカリ・水とは反応しませんが、濃硝酸・濃硫酸・フッ化水素酸には溶けるという特徴があります。
主な産出国は南アフリカ・中国・ロシア・アメリカの4か国で、90%を超えています。鉱石から採れるものよりも原油やオイルサンドに含まれているものの方が品質が良く、資源としてのバナジウムは南アフリカ・中国・ロシアに多く埋蔵されています。産出国の国家・バナジウム生産企業の動向により価格変動が起きやすく、供給も不安定になりがちです。このようなことから、数年に1度の割合でバナジウム価格の高騰が起こっています。
バナジウムの8割以上が製鋼添加剤として使われていますが、バナジウム化合物は触媒として利用され、化学・電気工学・電子工学の分野でも幅広く活用されています。
バナジウムという元素名が決まるまでにいろいろな名前があったという点については、バナジウムが酸化数によって色彩が多様に変化することが影響しています。この特徴を生かして、高温に耐える着色剤として釉薬やセラミック顔料として利用されています。
五酸化バナジウム・塩化バナジウム:鮮やかなオレンジから赤
おおむね2価:紫
3価:緑
4価:青
5価:無色
ミネラルとしてのバナジウムは、大部分の脊椎動物にとって必ずしも必要であるとは考えられていません。まだわからない部分も多いのですが、生体内で酵素などの構成にかかわっていることは確認されています。
様々な生物から検出もされていますが、特にホヤ・ベニテングタケ・藻類などの保有率が高くなっています。
近年は「バナジウム天然水」という言葉を耳にする機会が増えています。これは、雨水などが玄武岩などによってろ過される過程で水の中にバナジウムが多く含まれるようになった水のことを指しています。日本では、富士山の付近で採取される湧水にバナジウムが多く含まれることがわかっています。さらに、富士山の湧水を普段から利用している住民は他の地域の人よりも血糖値が低いこともわかりました。
これにより、バナジウムが人の血糖値を下げる効果が期待できるとされ、評判になっています。
試験管内の実験ではバナジウムイオンが細胞に対して致死毒性を持つことも確認されていますが、常識の範囲内で水・食材を摂取している限り人体にとって有害になることはありません。