原子番号69:ツリウムの特徴や性質

ランタノイド

原子番号69はツリウム、元素記号はTmです。元素名の由来についてはいくつかの説があります。スカンジナビア半島の古い地名にちなんだというもの、スウェーデンの町の名前にちなんだというもの、世界最果ての北極の地名にちなんだもの、という説です。1879年にツリウムと同時にエルビウムと思われていた物質から発見されたもう1つの元素ホルミウムがストックホルムの古い地名にちなんで命名されている事を考えると、スカンジナビア半島の古い地名にちなんで命名されたと考えるのが有力なようです。

常温常圧の状態では銀白色のやわらかい金属で、六方最密充填構造の安定した結晶構造を持っています。空気中に置いておくと酸化によって表面がくもり、高温では燃えて酸化物となります。加熱するとハロゲンと反応します。水にはゆっくりと溶けますが、熱水には反応を起こし酸には簡単に溶けるという特徴があります。-235.15℃以下になると強磁性を示します。

ツリウムが産出される鉱石は、ゼノタイムです。

ツリウムにはエルビウムと同様に光を増幅させる性質があります。ツリウムはエルビウムを使った増幅器が対応することができない波長帯の光を増幅させることができるため、エルビウムと合わせて添加することで光ファイバーの伝送容量を増やすことができました。

YAGレーザーにツリウムを使用することで、人体に優しい手術ができるレーザーになります。というのも、ツリウムYAGレーザーは波長が2013nmで水分子に吸収されやすいという特徴があります。レーザーを照射した部位の組織には、深さ1mm未満という小さな影響しか与えません。健康な組織への影響が小さく患部を確実に蒸散させることができるうえに、連続波モードでの照射ができます。また、照射部を凝固させる力と患部を切開する力に優れています。

ツリウムYAGレーザーのこれらの特徴を生かし、利用されているのが医療の分野でも前立腺肥大症に対する治療です。手術を受ける患者さん側の負担が少なくて済む低侵襲性手術として活用されています。電気メスなどで患部を切除するのではなくレーザーで患部を蒸散させて治療するため、術中や術後の出血リスクも少なく血液がサラサラになるようになる薬を服用中の患者にも使える手術法です。ダメージが少ない分患者の回復も早く、入院期間も短くなるというメリットがあります。

他にもツリウムの用途には放射線量計や熱ルミネセンス線量計などがあります。