原子番号73:タンタルの特徴や性質

遷移元素

原子番号73はタンタル、元素記号はTaです。元素名については、ギリシャ神話に登場する神タンタロスに由来して命名されました。ギリシャ神話の中でタンタロスはゼウスの怒りに触れてしまい、水を飲もうとすれば水が遠のき、果物を取ろうとすると果物が遠のくというじらされる罰を課せられました。タンタルの発見にも時間がかかり化学者たちがじらされたことからこの名前がつけられました。現代でも英語で人をじらすことをtantalizeといいます。

常温常圧の状態では銀灰色をした金属で、密度と延性が高くとても硬く加工がしやすいという特徴があります。熱・電気の伝導度も高く、酸による腐食にも強いという性質を持っています。金属を侵す能力が高い王水に入れても150℃以下であればタンタルは溶けることがありません。ですが、フッ化水素水・フッ化物・三酸化硫黄を含んだ酸性の溶液や水酸化カリウムには溶けます。融点は3017℃と高く、これは元素の中でも5番目の高さになります。(タンタルを超える融点を持つのは、タングステン・レニウム、オスミウム、炭素です)

タンタルには2つの結晶構造があり、α・βに分かれます。αタンタルは体心立方格子の結晶構造を持っており、比較的柔らかく展延性があります。βタンタルは正方晶系の結晶構造を持っており、硬くてもろいという特徴があります。ほとんどのタンタルはα構造をしています。β構造のタンタルは750~775℃に加熱されることでα構造に変化します。ベータ構造のタンタルは通常、溶融塩共晶から化学蒸着や磁電管を使った真空蒸着、電気化学析出で得ることができる薄い膜として存在しています。

タンタルが採れる鉱石としてはタンタル石やスズの鉱石が挙げられます。21世紀初めまではオーストラリアやブラジルが主な生産国でしたが、近年はコンゴ民主共和国・ルワンダなどアフリカ諸国での生産が増えています。タンタルが埋蔵されていると考えられているのは、上位からサウジアラビア・エジプト・グリーンランド・中国・エチオピア・モザンビークなどが挙げられます。

タンタルの用途としては、電子機器に使われることが多くあります。特にタンタルを利用したコンデンサーは一般的なアルミニウムコンデンサーに比べるとおよそ60分の1というコンパクトさを実現し、同じ程度の性能を出すことができます。このことから、電子機器の小型化にタンタルコンデンサーが重要な役割を果たしており、携帯電話の普及で需要も高まり価格が上がりました。

また、タンタルは人体の組織や器官との親和性が高く拒絶反応が起きにくいという特徴があります。そのため、人工骨や人工歯根(インプラント)の材料として実用化されています。