原子番号34:セレンの特徴や性質

卑金属元素

元素番号34はセレン、元素記号はSeです。元素の名称はギリシャ神話の月の女神・セレネにちなんで命名されました。すでにラテン語の地球を意味する言葉から命名されたテルルが発見されており、周期表でセレンがテルルの1つ上に位置していたことがきっかけです。

常温常圧の状態では六方晶系で鎖状の構造を持った灰色セレンが安定しています。一方で単斜晶系のセレンは赤色をしています。水には溶けませんが、二硫化炭素には溶け、熱濃硫酸とは反応を起こします。燃やした際には不快なにおいを持つ二酸化セレンという気体が発生、硫黄と似た性質を持っています。

セレンは銅や銀との化合物として産出され、そこから製錬されます。主な産出国としては日本・カナダ・アメリカが挙げられます。セレン自体は自然界に広く存在しており、古くから毒性があることがわかっていましたが近年は人体にとっても微量なレベルで必須元素であることがわかっています。抗酸化作用が認められていますが、毒性があるため摂取しすぎるのは危険です。

人にとって必須元素であることから、摂取量が少なくセレン欠乏症を発症すると克山病を発症しやすくなることがわかっています。克山病は幼い子供や若い女性に多く見られ、心臓の内壁に損傷を与えて心筋症を引き起こします。ですが、セレン欠乏症の発症はまれであり、セレンの摂取量が少ないと言われているニュージーランドやフィンランドでもその症例はあまり見られません。一方で、中国・シベリアでは子供がセレン欠乏症から関節や骨の病気を発症、日常生活に支障をきたすような症状が出ることがあります。また、セレンの欠乏はヨウ素欠乏症も悪化させることがわかっています。

セレン欠乏症はサプリメントによって回復することがありますが、克山病の心筋症予防はできますが治癒はできません。

日本では一般的な食事(肉・植物など)からセレンが適量摂取できるため、欠乏症を気にする必要はありません。土壌中のセレン含有量が極端に少ない地域の場合は、意識した方がよいようです。

医師の処方を受けずにセレンを1日当たり1㎎以上摂取しているしているような場合には、セレンの過剰摂取となり有害な影響が出るようになります。症状としては吐き気・嘔吐・下痢・脱毛・爪の異常・発疹・疲労・神経の損傷などがあります。セレン過剰症については、セレンの摂取量を減らすことが治療の一つとなります。

セレンの人体への影響を考えて使用が制限されるようになりましたが、金属のセレンには半導体性・光伝導性があるため、コピー機の感光ドラムや整流器・カメラの露出計・ガラスの着色剤・脱色剤など我々の身近なところで利用されてきました。