原子番号84:ポロニウムの特徴や性質

卑金属

原子番号84はポロニウム、元素記号はPoです。元素名はポロニウムの発見者であるポーランド人化学者マリ・キュリーがラテン語で祖国のポーランドを表す言葉から命名したのが由来です。

常温常圧の状態では銀灰色をした放射性の半金属で、安定した単純立方晶の結晶構造を持っています。固体から気体へ直接変化する昇華性があり、化学的な性質はテルルやビスマスに似ています。水には溶けませんが塩酸にはゆっくりと溶けるという性質があります。

84番元素が存在すること自体は1869年に周期表を発表したメンデレーエフが予言していましたが、実際に発見されたのは1898年7月でした。キュリー夫人として有名なマリ・キュリーと夫のピエール・キュリーがウラン鉱石から発見しました。

キュリー夫妻はポロニウム発見と同時にラジウムも発見しています。その功績が認められ、1911年にノーベル化学賞を受賞しますがピエールが1906年に事故死していたためキュリー夫人のみの受賞となりました。

ポロニウムはウランやトリウムが崩壊する際に生成されます。そのため、地殻中にはごく微量ではありますが、天然のポロニウムが存在しています。発見の元になったウラン鉱石には1㎏あたり0.00007㎎しか含まれていないため、ポロニウムを分離するために数か月かかったとされています。

ポロニウム210は強いα線を放出し、発熱します。その強度はウランの約100憶倍とも言われ、α線の発生源として研究に利用されています。また、ポロニウム1gから500℃もの熱が放出されることから、主にロシア製の人工衛星用の原子力電池の熱源としても利用されています。α線はプラスの電荷を帯びているため、紙・針金などを巻き取る機械に貯まるセイデンキを除去するイオナイザーという装置にも使われます。

ベリリウムにα線を衝突させることで中性子が生じる反応を利用して、中性子源としてポロニウム210が利用されます。核兵器の起爆装置で、ウラン・プルトニウムなどの連鎖反応を引き起こすための最初の中性子はポロニウム210が放出するα線とベリリウムの核反応によって生成されます。

ポロニウムの毒性は全元素の中でも最も高いと言われています。危険性が高すぎて、十分なデータが取れないのが現状です。ポロニウムの発するα線は皮膚を透過しないため外部被爆の心配は少ないのですが、昇華性が高いため内部被爆が起きやすいです。

2004年11月に死亡したPLO執行委員会議長、2006年11月に死亡した元ロシア連邦保安庁情報部員の死にはポロニウム210が関係しており、暗殺されたと考えられています。ポロニウム発見者のキュリー夫人も死因は白血病であり、ポロニウムの影響を受けたと考えられています。キュリー夫人が実験で使っていたノートからは現在でも放射線が出ているほどです。