原子番号72はハフニウム、元素記号はHfです。元素名は発見者であるデンマークの化学者ニールス・ボーアの研究所があったコペンハーゲンのラテン語名が由来になっています。
常温常圧の状態では銀灰色をした金属で六方最密充填構造の安定した結晶をもっています。展性と延性に富み、酸には溶けるけれどアルカリには溶けないという性質があります。高温になると酸素・水素・窒素・ハロゲンと反応します。化学的にも物質的にも性質がジルコニウムに似ており、ジルコニウムとハフニウムの分離が難しくハフニウムの発見が遅れたという経緯があります。(ジルコニウムの発見は1798年、ハフニウムの発見は1923年です)そのため、ハフニウムは天然の元素の中では最後から3番目に発見された比較的新しい元素となっています。
ハフニウムが含まれている鉱石としては、ジルコニウムが採れるジルコンやバッテレイ石があります。ジルコンの主な産出地はオーストラリアや南アフリカが挙げられます。
通常、ジルコニウムの中に少量のハフニウムが含まれていますが、ジルコニウムよりハフニウムの含有量が多いハフノンという鉱石もあります。ただし、ハフノンはとても珍しくあまり見つけることができません。日本では岐阜県苗木地方で発見された苗木石にハフニウムが最大7%含まれることがわかっています。ジルコンに含まれるジルコニウムが98%、ハフニウムが2%であることを考えると、苗木石は多くのハフニウムが含まれていることがわかります。
ハフニウムとジルコニウムの性質が似ているためにハフニウムの発見が難しかったわけですが、正反対の性質を持っている部分もあります。それが、中性子との反応性です。ジルコニウムは中性子をほとんど吸収しません。そのため、原子炉の中に設置するウラン燃料棒の被膜として利用されます。反対に、ハフニウムは中性子をよく吸収するため、原子炉の中でウランの核分裂の連鎖を抑えるための制御棒に利用されます。
ハフニウムとジルコニウムは分離が難しいのですが、原子炉の中で使用する際はそれぞれ純度の高いものを使用しないと、意味がなくなってしまいます。
原子炉以外の用途では、ハフニウムとジルコニウムが混じっていても特に大きな問題はなく、多くの場合は化合物として利用されています。
現在は日本だけでなく世界的にも原子力発電所の建設が縮小されています。このため、純度の高いハフニウム・ジルコニウムの必要性が減っており生産量も減っているのが現状です。このようなことから、純度の高いハフニウムはとても稀少で、高価なものとなっています。