原子番号9:フッ素の特徴や性質

卑金属元素

原子番号9はフッ素、元素記号はFです。フッ素の名称はフッ素の化合物で融剤として使われていた蛍石にちなんでつけられました。
常温常圧の状態では淡い黄褐色をした気体で、塩素やきな臭いと言われるような独特の臭いと、とても強力な酸化力を持っているのが特徴です。

反応性が高く、他の物質と化合しやすいため自然界では単体のフッ素は存在しないと長い間考えられていました。ですが、2012年にアントゾナイトという鉱物にフッ素分子が含まれていることが判明しました。これ以外に自然界のフッ素は今のところ確認されていません。

フッ素には私たち人間の歯のエナメル質を強くしてくれる効果があります。また、虫歯の原因となる菌が酸を出すことを抑制してくれるため、虫歯予防に効果的です。小さな虫歯がある部分では、歯の表面にカルシウムの結晶を作ってくれるため、再石灰化の作用により初期の虫歯は治すことができると言われています。

こうしたことから、近年は歯磨き粉にフッ素を配合したり、虫歯を予防するためにフッ素を塗布することで虫歯予防に役立てられています。日本以外の国では、水道水にフッ素を入れて虫歯予防を図っているところもあります。

一方で工業用として使われているフッ化水素は人がさらされると、体内のカルシウムと急速に結合してフッ化カルシウムを形成してしまいます。フッ化水素は透過性が強く、ゴム手袋はおろか皮膚・筋肉も抜けて骨に到達し、カルシウムを消費します。万が一、フッ化水素によって低カルシウム血症が起きると、全身に症状があらわれ心室細動から死に至ることもあります。

車の車体の表面にポリマーコーティングする際のコーティング剤にもフッ素が使われていますし、焦げつかないフライパンや鍋の表面にはフッ素樹脂加工が施されています。フッ素と炭素を結合させ、プリテトラフルオロエチレンという化合物を作り、それを貼りつけることでコーティングとなります。

人にとって良い面も悪い面もあるフッ素は、フライパンなどに利用して安心なのか?と心配になる方もいるかもしれません。フッ素樹脂加工に使われているフッ素樹脂は毒性はなく安定しているので、安心です。ですが、鍋を空焚きなどして高温になってしまうと劣化や分解が始まり人体に悪影響を及ぼしてしまいます。

フッ素樹脂が劣化し始めるのは約260℃、分解し始めるのが約350℃とされています。フライパンや鍋を通常通り使っていれば、これほどの高温になることはなく安全です。ですが、フライパンや鍋に何も入れない状態で火にかけてしまうと260℃以上になってしまうこともあります。万が一、空焚きをしても毒性のある煙は出ないと言われていますが、フッ素樹脂が傷んでしまうので避けた方が良いでしょう。