原子番号17:塩素の特徴や性質

卑金属元素

原子番号17は塩素、元素記号はClです。英名のchlorineはギリシャ語の「黄緑色」を意味する言葉から命名されました。そのまま日本語に直訳すると「緑気」となりますが、食塩の主成分となっていることから和名は「塩素」とつけられています。

塩素は常温常圧の中では特有の臭いを持った黄緑色の気体の状態です。反応性がとても高く、様々な金属や有機物と反応して塩化物を作り出します。強い腐食性と毒性があるため、その特性を生かして漂白剤・殺菌剤にも利用されています。日本国内では水道水・プールの殺菌剤として使用されているのが最も身近なのではないでしょうか。また、近年では水酸化ナトリウム水溶液と反応させた「次亜塩素酸ナトリウム」が、ウイルス性の感染症予防のためによく使われるようになりました。

地球上には天然元素が92種類ありますが、塩素はそのうち18番目に多く存在しています。マントルの中には99.6%も含まれていますが、その形状は鉱物・イオン・気体とさまざまです。さらに地殻に0.3%、海水に0.1%含まれていることがわかっています。

人工的に塩素を作るには、塩化ナトリウムの水溶液からイオン交換と電気分解を行って、水酸化ナトリウムと塩素を作ることができます。日本国内でも塩素ガス・液体塩素ともに生産がおこなわれています。塩素ガスは危険性が高いため高圧ガス保安法によって黄色いボンベに保管することが義務付けられており、液体塩素も黄色い塗装をしたタンク車によって搬送されます。

先述の通り、塩素は水道水の消毒に使われています。水道法によって、各家庭の蛇口から出てくる時点で、1リットルあたり0.1㎎以上の濃度を保つように定められています。このため、各自治体によって水道水の塩素濃度は変わります。

水中で塩素は有機物と反応するため、カルキ臭と呼ばれる塩素の臭いが発生したり、発がん性があるのではと言われるトリハロメタンを作り出してしまいます。ですが、日本の水道基準の値はWHOよりも厳しいものとなっているため、一般的な飲用で発がん性を心配する必要はありません。さらに水道水に塩素を加えることによりコレラなどの病気が駆逐されてきました。近年は水道水の処理技術も高度化しており、塩素臭が気にならないほど弱まっています。自治体によっては水道水を「おいしい水」として販売しているところもあります。

塩素自体は強い毒性を持っており、第一次世界大戦中には化学兵器にも使用されました。塩素ガスを吸引すると呼吸器に損傷が与えられます。具体的には皮膚・目・呼吸器の粘膜を強く刺激するため咳や嘔吐が出ます。症状が重症化すると呼吸不全から死に至る場合もあります。液体塩素が直接肌に触れた場合には、その部分が炎症を起こします。