原子番号50:スズの特徴や性質

卑金属

原子番号50はスズ、元素記号はSnです。元素記号はラテン語で銀と鉛の合金を指す単語に由来してつけられました。元は違う金属を表していた言葉でしたが、後にスズを表す言葉になったので元素記号にも使われました。

常温常圧の状態では正方晶の構造を持った展延性のあるものが安定しており、この状態のスズをβスズ(白色スズ)と呼びます。白銀色の金属で、力をかけて変形させると双晶変形による亀裂音が発生するのが特徴です。(この亀裂音を「スズ鳴き」といいます)

スズは13.2℃以下の状態ではダイヤモンド型の結晶構造を持った、脆く灰色非金属物質になります。この非金属のスズをαスズと呼びます。αスズには一般的な用途がないのですが、特殊な半導体に使われています。そのため、この項では金属状態のβスズについて記述していきます。

純度の高いβスズは13.2℃になるとαスズへ転移するという特徴があります。この時、βスズが持つ展性は失われ体積が増えます。βスズにアルミニウムや亜鉛などが含まれている場合には、転移する温度が氷点下になります。常温ではほとんど転移は行われませんが、気温が下がる地域でスズ製品を取り扱う場合には何もしない状態でも、スズ製品が膨らみボロボロになってしまうという現象が起きることがあります。

一般に流通している金属スズの純度は99.8%です。0.2%は不純物で、ビスマス・アンチモン・鉛・銀が含まれます。これらの不純物はβスズがαスズへと転移することを抑制する働きがあり、スズの硬度を向上させる枠割を持っています。

スズは融点が低く、柔らかさもあり加工しやすいためスズ単体・合金ともに古くからいろいろなものに利用されてきました。日本にスズが入ってきたのは奈良時代後期ともいわれています。

では、スズの用途を紹介していきましょう。

◎合金

スズのうち約45%が鉛との合金で「はんだ」として利用されています。鉛との合金はパイプオルガンのパイプにも使われます。

スズと銅の合金は青銅(ブロンズ)として、器具や武器などとしても利用されます。青銅のうち銅90%・スズ10%の合金は砲金と呼ばれ、大砲に使われていました。

活字印刷に使われていた活字を作る際にはスズ・鉛・アンチモンの合金が使われました。

◎めっき

スズの美しい銀白色と耐食性に優れた特徴を生かし、メッキ処理にも使われます。(約20%)βスズを鋼板にメッキしたものが「ブリキ」で、缶詰やおもちゃの材料として使われています。

◎単体スズ

加工しやすいにもかかわらず適度な硬さと錆びにくさがあるため、食器などに「スズ箔」としても使われています。また、スズだけでも食器なども作られ「手で形の変えられる食器」としても販売されています。