原子番号44はルテニウム、元素記号はRuです。元素名は中世の東欧に存在した地名・ルーシを表すラテン語のルテニアに由来して命名されました。
常温常圧の状態では銀白色をした硬くて脆い金属で、探偵した結晶構造は六方最密充填構造をしています。酸化・腐食をしにくいという特徴があり、展性に優れています。プラチナ(白金)の生成時に副産物として得ることができるため、特徴もプラチナに似ています。白金族元素の1つになっており、貴金属としても扱われています。
地球の地殻には74番目に多く存在しているとされており、とても貴重です。ウラル山脈や南北アメリカにある白金族金属が採れる鉱石に含まれています。商業的にはカナダ・オンタリオ州にあるペントランド鉱や南アフリカのパイロキシナイトの鉱床などから採られています。
年間約30トンのルテニウムが採掘されており、埋蔵量は約5000トンと推定されています。白金族金属の鉱石が採掘される場所によってルテニウムの含有量は大きく異なっており、その含有量は南アフリカで約11%ですが旧ソ連のものは約2%と言われています。鉱石以外からでは、ニッケルや銅を生成する際の副産物・白金金属の鉱石処理から得られています。
ルテニウムは融点・沸点ともに非常に高く、硬度もすぐれているためいろいろな場面で利用されています。その用途としては有機化合物を合成するための触媒(不斉触媒)、コンピュータ・DVDなどの記録層、ハードディスク(容量を増やすための安定化)、抵抗温度計、チップ抵抗器、酸化剤、万年筆・高級ボールペンの先端部、合金の添加剤などが挙げられます。
ルテニウムの用途の中でも一般の人が目で見える部分に使われているのが、万年筆やボールペンの先端部ではないでしょうか。同じ白金族元素のオスミウムやイリジウムとの合金で使用されています。ルテニウムが白金族以外の金属と合金になることは珍しいのですが、チタン合金や超合金に0.1%~6%ほどの少量のルテニウムを加えることで元の金属の特性を伸ばすことができます。
近年はルテニウムの新しい用途について研究が進められており、太陽電池の性能を高める、二酸化炭素の分解や水の分解によって水素ガスを発生させることがおこなわれています。また、マイクロエレクトロニクスの分野では、部品の中の金属やケイ化物を置き換えることができる材料としても注目されています。ルテニウムを揮発性酸化物にすることで半導体プロセス技術と互換性のある金属にすることができ、マイクロエレクトロニクスの小型化に大いに役立つことが期待されています。