原子番号88:ラジウムの特徴や性質

アルカリ土類金属

原子番号88はラジウム、元素記号はRaです。元素名については、放射線を出していることからラテン語の「光線」を意味する単語からつけられました。

常温常圧の状態では体心立方構造の安定した結晶構造をしています。反応性が高く水と激しく反応し、酸には簡単に溶けます。空気中に置いておくことで簡単に酸化し、暗い場所で青白く光るという特性があります。科学的な性質はバリウムに似ており、カーマイン色の炎色反応を示します。

1898年にキュリー夫妻によって放射線の測定と分光学的測定が行われ、ラジウムが発見されました。閃ウラン鉱から元素の分離を行っていた時に、バリウムと似ている部分に高い放射能があることを見つけ出したことがきっかけでした。そこから閃ウラン鉱の中に新しい物質が存在すると考え、バリウムから新たな物質を分離・精製したのがラジウムです。研究の途中で夫のピエールが亡くなりましたが、夫の仕事も妻のマリーがラジウムの研究を進めた結果、塩化ラジウムを電気分解することで金属ラジウムを得ることができました。

日本に初めてラジウムが持ち込まれたのは、1903年です。1904年には神経学雑誌にラジウムのことが掲載され、ラジウムを利用した治療についても言及されました。

ラジウムの同位元素は天然に4種類存在することがわかっています。キュリー夫人が発見したものはラジウム226でした。ラジウム1gが放出する放射能の量を1キュリーとする単位が長らく使われてきましたが、他の放射能を計測するためには大きすぎる単位でした。そこで、現在では元素の崩壊1回を基本として1ベクレルと呼ぶようになりました。1キュリーをベクレルに換算すると、37憶ベクレルとなります。キュリーはキュリー夫人から、ベクレルはフランスの物理学者から名付けられた単位です。

ラジウムは1960年代以前は夜光塗料として時計の文字盤などに塗られていました。当時、塗料は手作業で塗っており、作業中に労働者は筆をなめて穂先を整えたりしていました。このことにより、労働者たちの間でラジウムが原因となる病気が多発し、多くの方が亡くなりました。アメリカでは1920~1930年代に時計の文字盤に夜光塗料を塗る作業に従事していた労働者が放射線中毒になり、訴訟が起こっています。

2011年には東京都世田谷区の木造民家の床下からラジウム226と思われる物質が発見され、大ニュースとなりました。

日本でみられる「ラジウム温泉」にはラジウム崩壊してできたラドンが水に分解してガスとなって含まれています。皮膚から体内に吸収したラドンは3~4時間で排出されるため安全です。ラジウム温泉は間接リュウマチや関節のこわばり、気管支喘息・アトピー性皮膚炎など多くの病気に効能があるとされています。