原子番号53:ヨウ素の特徴や性質

卑金属元素

原子番号53はヨウ素、元素記号はIです。気体がすみれ色であることから、ギリシャ語ですみれ色を意味する単語から「ヨード」と命名されています。そのため、日本語でも「ヨード」とも呼ばれます。元素記号はヨウ素の英語記述(iodine)からつけられています。

常温常圧の状態では固体ですが、固体から気体へと変わる昇華性があります。固体の時は、金属光沢をもった黒い色をしており結晶は紫黒色の斜方晶系です。気体になると紫色になります。

地球上には多くのヨウ素が存在していますが、その大部分が海(特に海底堆積物)に含まれているとされています。土壌に含まれている要素については、地域によって差があります。このため、ヨウ素の産出は主に海水を利用して生産されています。世界的に生産量が多い国はチリ・日本・アメリカなどです。日本で生産されるヨウ素のほとんどが千葉県にある水溶性天然ガス鉱床から産出する地下水を利用して生産されています。その量は世界シェアのおよそ3割にもおよび、埋蔵量も世界の2/3を占めるとされています。

単体のヨウ素は日本において毒物及び劇物取締法で「医薬用外劇物」に指定されていますが、ヨウ素自体は人にとっては必須元素の一つとなっています。それは体内で甲状腺ホルモンを合成するために必要だからです。食材としては昆布・わかめ・のりなどに多く含まれているため、日本においては通常の食事を心がける限りヨウ素が欠乏することはほとんどありません。ですが、海外(特に内陸部)では要素を摂取する機会がなく、欠乏症を引き起こすことがあります。

ヨウ素欠乏症としては、甲状腺の肥大(甲状腺腫・首の腫れ)が最もよく見られます。また、代謝低下による体重の増加や子供の発育不全・協調運動障害、成績不振などを含むIQの低下、成人の精神機能障害・エネルギーや生産性の低下、妊娠中には死産・流産・先天性異常などのリスクが高まることがわかっています。

逆にヨウ素を過剰摂取した場合には甲状腺ホルモンが作れなくなり甲状腺の機能が低下してしまうことがあります。(甲状腺機能低下症)また、バセドウ病や橋本病の治療を受けている方は、ヨウ素の摂取量を控えないと薬の効果が薄れたり甲状腺の腫れが大きくなることがわかっています。

ヨウ素は人体に必要なだけでなく、工業・農業・医療の分野でも幅広く利用されています。一番需要が多いのはレントゲンの造影剤の原料です。血管や臓器の診断をするために、ヨウ素がX線を吸収する性質を利用しています。

殺菌剤の「ヨードチンキ」としての利用は、多くの方にとって最も身近なものでしょう。ヨウ素には殺菌・防カビの効果があり、古くから使用されています。

他にも液晶関連(偏光フィルム・ドライエッチングガスなど)、飼料添加物、安定剤、太陽電池、導電性ポリマー、レーザーなどで活用されています。