原子番号108はハッシウム、元素記号はHsです。元素名については、発見場所となった重イオン科学研究所があるドイツ・ヘッセン州のラテン語名に由来して命名されました。
1984年に重イオン研究所の線形加速器で鉛に鉄イオンを照射する実験にて、ハッシウムが合成されました。2002年にはスイスのベルン大学にてわずか7つの原子から酸化物・オキソ酸塩を合成する実験が行われ、ハッシウムの化学的な性質がいくつか測定されました。
常温常圧の状態では固体となると考えらえており、最も安定した同位体の半減期は約12分となっています。ハッシウムはアルファ崩壊してシーボーギウムに変化するか、自発的な核分裂で崩壊していきます。
原子のMM理論(巨視的-微視的理論)では原子番号108については陽子単独の魔法数と考えられており、中性子の魔法数(N=162)を併せ持った二重魔法数であるハッシウム270は長い半減期を持つ可能性があるとされてきました。しかしながら、2001年5月のベルン大学とパウル・シェラー研究所や他の国際研究チームがキュリウム248とマグネシウム26からハッシウムの合成に成功した際に、推測された半減期は2~7秒でありMM理論での予想が覆されました。
一方で中性子の魔法数のNが170を超えると、再び安定する傾向が強まるという理論の研究もあり、中性子魔法数(N=184)を持つハッシウム292は安定の島の中心と考えられるという意見もあるようです。
ハッシウムは第8族に属する元素の遷移金属であり、オスミウムに似た性質を持つことがわかっています。周期表の位置から「エカオスミニウム」と呼ばれたこともありました。2002年の合成実験が成功したことで、現時点で確認されている化合物に含まれる最も原子番号が大きな元素となっています。その化合物とは、四酸化ハッシウム(HSO4)です。原子番号109以降の原子を含んだ化合物はいまだ発見されていません。
新しい元素の命名については、本来であれば発見した人の提案が優先されます。ハッシウムについてはアームブラスター、ミュンツェンベルクらが1984年の実験に参加しており、この2名が発見者とされています。発見チームは1994年に発表した超フェルミウム元素に関する報告書で新元素をドイツの化学者オットー・ハーンにちなんで「ハーニウム」と呼んでいました。
ところがこの名称はアメリカの化学会が105番元素に命名案として提案していたため、発見地にちなんでハッシウムと名付けられることになりました。