原子番号31:ガリウムの特徴や性質

卑金属

元素番号31はガリウム、元素記号はGaです。ガリウムを発見したボアボードランが母国・フランスのラテン名「ガリア」からガリウムという名称をつけた、という説があります。また、ボアボードランのミドルネームから関連付けられて命名されたという説もありますが、後にボアボードラン本人が否定したと言われています。

ガリウムは温度や圧力によって、安定した結晶構造が複数あります。常温常圧の状態では、斜方晶系で安定し、青みがかった光沢のある金属結晶となっています。融点が約29.8℃と低く、人の掌の上に乗せただけでも溶解してしまいます。液体になったガリウムの毒性は強くなく、特に警戒する必要はありませんがガラス・金属・皮膚などに触れた際の濡れ性が強いため、取り扱いが難しいという特徴があります。加えて、酸にもアルカリにも溶けるという特徴もあります。

自然界の中で単体で存在していることはなく、ガリウム鉱物というものも存在しません。ガリウムを得るためにはアルミニウムや亜鉛を製錬する際に副産物として得るか、ボーキサイトの微量成分・閃亜鉛鉱からの少量抽出などがあります。ナミビアのツメブで採れるゲルマナイトという鉱石には比較的多くのガリウムが含まれていると言われていますが、その含有率は0.6~0.7%と決して高くはありません。

日本では世界のガリウムの需要のうち約7割を占めており、その多くは既にいろいろな製品に使われたガリウムをスクラップ回収して得られています。

人の手の温度でも簡単に液体いなってしまうというガリウムの特徴を利用しているのが、マジックの世界でよく行われている「スプーン曲げ」です。人が触れてすぐの状態では溶けないので、硬い状態を観客に見せることができ、曲げたい部分を指でこするように温めることでその部分が溶け始め、簡単に曲げられるようになります。

また、ガリウムでスプーンを作り、何も知らない人に熱いコーヒーや紅茶とともに出すといういたずらも19世紀の化学者たちの間で流行したようです。何も知らずにスプーンを使った人は、あっという間に溶けてしまうスプーンにひどく驚いたようです。

さらにガリウムには他の金属を侵食してしまうという特徴もあります。とても硬い金属板にガリウムを乗せて8時間ほど置いておくだけで、金属板は手でも簡単に崩れてしまうほどもろくなってしまいます。ガリウムは他の金属と触れないように保管する必要があります。

ヒ化ガリウムはマイクロ波集積回路・赤色発光ダイオード・半導体レーザーなどに用いられ、窒化ガリウムは青色発光ダイオードの材料として使われます。世界市場の約95%ものガリウムが半導体に使用されています。