元素記号64はガドリニウム、元素記号はGdです。元素名はレアアースを初めて発見したガドリンの功績をたたえ、サマリウムを発見しガドリニウムの存在を確認したボアボードランが1886年に命名しました。ガドリニウム自体が「新しい元素がある」と発見されたのは1880年のことでしたが、ボアボードランが確認するまで6年を要しました。
常温常圧の状態では銀白色の金属で、安定した六方最密充填構造をしています。水にはゆっくりと溶けますが酸には簡単に溶けてしまうという特徴があります。
ガドリニウムはバストネス石に含まれており、中国南部から鉱石が採掘されています。レアアースは別名希土類元素とも呼ばれており、科学的な性質がよく似ているために一つのグループとして扱われます。ですが、ランタンからユウロピウムまでの7つの元素は軽希土、ガドリニウムからルテチウムまでの8つの元素は重希土と分けて呼ぶことができます。この区別は鉱石の違いに現れます。
軽希土はバストネス石、重希土はゼノタイムに多く含まれているという特徴があります。ガドリニウムの場合もゼノタイムの方が高濃度で含まれていますが、バストネス石からの方が精製が簡単なため、バストネス石から産出されているのが現状です。ちなみに、テルビウムからルテチウムの7つの重希土はバストネス石の中の含有率が合計で約0.3%と特に少なくなっています。
ガドリニウムは7つの不対電子を持っており、それぞれの異なる軌道で磁力の大きさやベクトルの量が最大になるという性質があります。この特性を利用して、磁性材料として使われたりMRIの検査時に使う造影剤にも利用されています。また、中性子吸収断面積がとても大きいことから、原子炉の制御材料にも使われています。さらには磁気冷凍機にも利用されています。
磁気冷凍機では、ガドリニウム-ガリウム-ガーネットに電磁石で磁力を与えた後、電磁石の電源を切るとガドリニウム-ガリウム-ガーネットが周りから熱を奪い冷やすという特性を利用しています。気体を圧縮膨張して冷却をする冷凍機は小型化すると性能が落ちるという欠点がありましたが、ガドリニウム-ガリウム-ガーネットを利用した磁気冷凍機は小型化しても性能が落ちないことから、需要が高まっています。
MRIの造影剤としては、ガドリニウムによってX線写真の濃淡がはっきりすることから正確な診断につながります。ですが、ガドリニウムは重金属ですから、人体にとっては有害です。造影剤に使われているガドリニウムは毒性を下げており、尿とともに体外に排出されるようになっていますが、腎機能が低下している人の場合は体内に残ってしまうことがあります。このため近年はガドリニウム造影剤を使用する際には腎機能が正常であることの確認をし、腎機能が正常な人に使う場合でも使用を慎重に検討するよう、医療現場に要請されています。