原子番号63:ユウロピウムの特徴や性質

ランタノイド

原子番号63はユウロピウム、元素記号はEuです。元素名は発見地であるヨーロッパにちなんで命名されています。1896年に純粋なサマリウムと考えられていた物質の中から未知の元素として発見され、分離されました。

常温常圧の状態では銀白色の金属で体心立法構造の安定した結晶構造をもっています。レアアースの中でも反応性が高く、空気中でもすぐに酸化されます。水との反応性もカルシウムと同じ程度です。熱水・酸にはすぐに溶け、アンモニアにも溶けるという特徴があります。アンモニアに溶けた際は溶液が青色になります。

ユウロピウム以外のレアアースはモナズ石に含まれていることが多いのですが、ユウロピウムは斜長石などのアルカリ土類金属を含む鉱物の中から発見されることが多く、モナズ石のユウロピウム含有率が異常に少なくなっています。

レアアースは化学的な性質が似ていて同じような特徴がありますが、その中でもユウロピウムだけが特異な挙動を示すため、それを「ユウロピウム異常」と呼びます。例えば、レアアースの原子は3価のイオンで化学的にふるまうのですが、ユウロピウムは2価のイオンで科学的にふるまうことができます。

このユウロピウム異常は月でも見られることがわかっています。月で採取した石を調べてみると、月の高地の石(斜長石)には他のレアアースに比べてユウロピウムの含有率が突出して多く含まれていました。一方で月の海の石(玄武岩)では、他のレアアースよりもユウロピウムの含有率が低くなっていました。このことから斜長石の生成にはユウロピウムが関係していることもわかっています。

ユウロピウムの用途としては蛍光体としての役割が大きいです。ブラウン管タイプのカラーテレビでは、赤い色を発生させるためにユウロピウムが使われていました。(青はセリウム・緑はテルビウムを利用)また、太陽光に近い照明で食品などをおいしそうに見せるために使われる三波長型蛍光ランプでは赤と青の光を出すためにユウロピウムが使われています。(緑はセリウムとテルビウムを使用)近年、消灯後に1時間ほど小さな光を保つ「ホタル蛍光灯」も一般的になっていますが、このホタル蛍光灯にも実はユウロピウムが活用されています。

また、青色発光ダイオードが製品化してからは、ユウロピウムを添加した物質が青の補色となる黄色い光を出すため、白色ダイオードの白を出すために利用されています。

さらにはユウロピウムの蛍光の強さや寿命の長さを生かして、医学の分野で放射性物質に代わって免疫反応用に試薬として使うことが研究されています。