原子番号56:バリウムの特徴や性質

アルカリ土類金属

原子番号56はバリウム、元素記号はBaです。元素名はギリシャ語の「重い」を意味する言葉にちなんでつけられました。これはバリウムの密度が大きく重いという特徴からの命名です。

常温常圧の状態では、体心立法構造の安定した結晶構造をしています。銀白色をした金属光沢のある金属ですが、空気中で酸化されることによって白い酸化被膜が作られるため、光沢は失われてしまいます。

地球の地殻の中に多く存在していることがわかっており、硫酸バリウム(重晶石)などの鉱石に多く含まれています。確認されている埋蔵量のうち約48%を中国が占めていて、生産量も中国がトップで世界の50%以上となっています。

バリウムは単体で使うよりも化合物で使われることが多くあります。バリウム単体の用途としては、テレビのブラウン管などに使われていた真空管の中に残った酸素やガスを取り除くために使われます。近年はブラウン管を使用しない液晶テレビやプラズマテレビが普及したことによって、バリウム単体の使用用途としてはマイナーなものに変わってきています。また、いろいろな合金の結晶構造を安定化させるための添加剤としても使われています。

バリウムの化合物については、いろいろな用途があるので紹介していきましょう。

まずは一番身近に使われているのが、「硫酸バリウム」です。

硫酸バリウムはペンキなどの白色塗料として利用されています。硫酸バリウムに硫化亜鉛を加えたリトポンという顔料は硫化物にさらされても色が変わらないため「永久の白」と呼ばれています。

人間ドックなどで胃のレントゲン撮影を行う際に飲む造影剤の「バリウム」はこの硫酸バリウムです。X線を透過しないため、レントゲンの造影剤として利用されています。

硫酸バリウム以外では、酸化バリウムが水の吸収剤、過酸化バリウムが漂白剤、チタン酸バイルムがコンデンサーに利用されています。また、バリウムは炎色反応で緑色を示すため、硝酸バリウムが花火の緑色を出すために利用されています。

レントゲンの造影剤として体内に入れることのあるバリウムですが、可溶性のものは実は人体にとって有毒な物質です。多量のバリウムが体内に取り込まれると神経系に影響が現れ、不整脈・震え・筋力の低下・不安・呼吸困難・まひなどが引き起こされます。最悪の場合は呼吸が止まってしまいますので注意が必要です。ですが、造影剤に使われるバリウムは水・胃酸にはほとんど溶解しないため、体内に入っても吸収されることなく体外へと排出されます。

造影剤として口にするバリウムは硫酸バリウムに水と粘着剤を混ぜて作られています。最近は飲みやすくするために、いろいろな味が付けられています。