原子番号54:キセノンの特徴や性質

希ガス

原子番号54はキセノン、元素記号はXeです。元素名はギリシャ語で「奇妙な」「なじみにくいもの」を意味する単語から命名されました。

常温常圧の状態では無色無臭の気体であり、希ガスの一種です。他の希ガスに比べて比較的イオン化しやすいという特徴があります。固体の時には安定した面心立方構造を持っています。空気中にもごくわずかに含まれていますが、空気からの単独精製はされておらず、液体窒素・液体酸素・液化アルゴンの生産をする際に副産物として回収されています。

キセノンにはいろいろな用途があります。

◎照明

従来の電球に比べて、キセノンガスを封入した「キセノンランプ」は輝度・明度・耐用年数・色が向上し、自然光に近い色を発してくれます。(キセノンの発光スペクトルが自然光に近く、明るいことが関係しています)身近な製品としては車のヘッドライトに使われていますが、キセノン自体が高価なため、高級車にしか利用されていません。

また、キセノンガスは熱伝導率が低く重いという特徴があり、写真用のストロボ・映写機用のランプなど自然光や強い光が必要な場面で利用されています。こちらでも照明効率が良く好評ですが、やはりコスト面が問題となっておりあまり一般化されていません。

◎イオンエンジン

現在、地球の周りの軌道上を飛んでいる人工衛星の多くはキセノンを利用したイオンエンジンを搭載しています。イオンエンジンでは、原子を荷電・加速することによる反発力で衛星を推進させていますが、粒子が重く安定しているキセノンが採用されています。(ラドンの方が重量はありますが、放射性があるため使用されません)

2010年に「はやぶさ」が帰還した際に使われたイオン推進エンジンの推進剤にもキセノンが使われていました。

◎レーザー・プラズマディスプレイ

キセノンの化合物(XeCI)を使用したレーザー光源は波長308nmを発振します。

キセノン単体でも低エネルギーでイオン化するため、蛍光物質を発光する放電ガスととしてプラズマディスプレイパネルの封入ガスとして添加されています。

◎X線検出

キセノンの重くてイオン化しやすいという特徴から、X線検出器にも利用されてます。キセノンにはX線を減らすとともにX線を電気信号に変える役割があり、人体の検査に利用される検出器に使われています。

◎医療

キセノンは人体の脂肪に溶けやすく、脳の組織への拡散や溶解性に優れているという特徴もあります。また、X線の高いエネルギー電磁波の透過を防ぐ能力も持っているため、人体用のCTスキャナーの造影剤に使われています。(医薬品としての認可を受けています)

さらに、昔からキセノンに麻酔作用があることが知られていましたが、近年の研究により現在麻酔に使われている笑気ガスよりも麻酔・鎮痛の能力に優れ、副作用も少ないことがわかっており注目度が高まっています。