原子番号65はテルビウム、元素記号はTbです。元素名については、スウェーデンにある小さな町・イッテルビーにちなんで命名されています。この町からはテルビウムだけでなくイットリウム・イッテルビウム・エルビウムの5つの元素が発見されています。
常温常圧の状態では銀白色をした金属で、安定した六方最密充填構造の結晶構造をしています。水にゆっくりと溶け、酸にはすぐに溶けるという特徴があります。空気中に置いておくことで表面が酸化され、高温で燃えます。ハロゲンとも激しい反応を見せます。
レアアースの中でも地殻中の存在が少なく、鉱石としてはガドリン石・セル石・ゼノタイム・フェルグソン石・イットリア石などから産出されます。これらの鉱物は密度が高く、岩石が分解されて砂になった後特定の層に集まるという特徴があります。この層を重砂と呼びますが、重砂を製錬することでテルビウム以外のレアアースやジルコニウム・チタン・ニオブ・タンタル・スズなどを得ることができます。
テルビウムを使った2種類の合金はパソコン周辺機器で活躍しています。テルビウム-ジスプロシウム-鉄合金は「磁歪(じわい)」と呼ばれる、磁力によって大きく伸び縮みする性質があり、プリンターの印字ヘッドに使われています。
一般的に使われる鉄を使ったフェライト磁石の場合、最大で0.004%の伸び縮みがあります。1970年以降にはレアアースと含めだ素材の研究が進むとともに、大きな磁歪を持つ素材がいくつか発見されました。そのうちの一つがテルビウム-鉄合金で、最大0.3%もの磁歪があります。当初はこの磁歪を得るために重さが1トンもある電磁石の出す強力な磁力が必要でしたが、研究が進んだ結果テルビウム-鉄合金にジスプロシウムを混ぜうことで、小さな磁力でも磁歪の大きさを保てることがわかりました。結果、手のひらに乗るような小型の電磁石でも大きな磁歪を得ることができるようになっています。
DVDがパソコンで利用するのが一般的となる前は記録媒体として主役だった、MO(光磁気ディスク)にテルビウム-鉄-コバルト合金が磁性体として使われています。磁性体には加熱によって磁性がなくなるという性質がありますが、テルビウム-鉄-コバルト合金は磁性がなくなる温度が約190℃と低温の部類になります。(フェライト磁石は磁性がなくなる温度が470℃以上になります)
テルビウム-鉄-コバルト合金を使った磁性体はレーザー光線による加熱で簡単に磁性を失うことができ、記録を消去することができます。
上記以外にもブラン管タイプのカラーテレビで緑色を発生するためにテルビウムが使われています。(青はセリウム、赤はユウロピウムを使用します)さらにX線フィルムの感度を上げるために、ガドリニウムとともにテルビウムが使われています。