原子番号52:テルルの特徴や性質

半金属

原子番号52はテルル、元素記号はTeです。元素名はラテン語で地球を意味する単語とローマ神話で大地の女神・テルースの名をもとに命名されました。

金属テルルと無定形テルルがあり、金属テルルは常温常圧の状態では銀白色の脆い半金属であり、六方晶の結晶構造をしているレアメタルの一種です。テルル単体では無臭ですが、化合物になるとにんにくのような臭いを発生させることがあります。この臭いの原因は生体がテルルに触れることで代謝の過程において気体のジメチルテルリドが生成されることにあります。

地殻中にもあまり存在せず、貴重です。鉱石が産出されるのはアメリカ・ペルー・カナダとなっていますが、鉱石からテルルを生産している上位国はカナダ・ベルギー・アメリカ・ペルー・日本の5か国で、世界の約8割をまかなっています。

毒性が高い元素の一つで、日本において東日本大震災によって福島第一原発で事故が発生した際に、環境中に放出されたことが確認されています。テルルが人体の中に入ると、呼気がにんにくに似た悪臭になり、口の渇き・傾眠・食欲不振・頭痛・呼吸困難などの症状が出ます。また、指・顔・歯肉などに青黒い斑点が出たり、発疹を生じる皮膚炎を発症、口の中で金属の味を感じることもあります。これらの症状はテルルが発掘される鉱山の労働者に多く見られ、一般的にはあまり見られませんのでテルルからの暴露から遠ざかると改善されます。ラットによる試験では臓器の異常・催奇性が出ることがわかっていますので、日本では特定標的臓器毒性の区分2に分類されています。

テルルには光を当てると電気を伝えやすくなるという特徴があります。この特徴を生かして、複写機のドラムや光ディスクにテルルが使われています。また、ゴムにテルルを混ぜることで耐熱性と耐摩耗性が向上します。ビスマスとの化合物は熱電素子やペルティエ素子として実用化されています。(電子冷却装置など)

テルルを利用した電子冷却装置では、フロンなどの冷媒物質やコンプレッサーなどの大型装置を使うことなく冷却ができます。このことから、車に搭載する小型の温冷蔵庫やCPUの冷却などにも利用されています。これらの研究は旧ソ連で宇宙ステーションの冷却装置に使うために進められていましたが、冷戦の終結によって技術が公開され、民間でも研究開発が進んだという経緯があります。

他には、テルルを鉄鋼に0.1%未満添加することで快削性や耐食性が向上する、鉛に0.05~0.065%添加することで鉛の耐食性・強度が向上するため、添加剤として利用されています。さらにガラスなどの着色剤としての利用法もあります。現在、テルル化鉛とテルル化スズの固溶体が赤外線検出材として利用されようとしていますが、地上では均一にならないため宇宙の無重力化での製造が期待されています。