原子番号38はストロンチウム、元素記号はSrです。元素名はストロンチウムを含む鉱物が発見されたスコットランドの村にちなんでつけられました。
常温常圧の状態で面心立方格子構造の安定した結晶構造をしています。銀白色の金属で、炎色反応は赤色です。空気に触れると酸化によって灰白色の被膜を作ります。空気中に置いておくことで酸素との激しい反応性が見られるため、真空装置の中でガスを吸着する役割に使われます。水とは激しく反応する特徴があり、水酸化ストロンチウムを作り出します。
ストロンチウムには放射線を出す性質のあるものと、放射線を出さないものがあります。過去に行われた大気中での核実験や原子力事故などにより大気中に放射性のあるストロンチウムがわずかながら存在しています。放射性のあるストロンチウムは約29年をかけてイットリウムになり、その後約64時間かけて放射性のないジルコニウムになります。
動植物にとっては、ストロンチウムが必須元素であるカルシウムに似た性質であることがわかっています。そのため、人体にストロンチウムが入った場合にはカルシウムが蓄積されやすい骨に蓄積しやすくなります。大気中に放出されているストロンチウムが水中や土壌から人体に摂取されることがあり、注意が必要です。このため、原子力施設などではストロンチウムが外部に出ないように監視をしています。
ストロンチウムには水に溶けやすいという特徴もあるため、空気中のものが海に溶け込んだり汚染水として海に放出されたものによって海が汚染される危険性があります。それらはプランクトンから魚への食物連鎖によって生体内で濃縮される懸念があり、海産物には注意が必要と考えられています。ストロンチウムが放出する放射線はベータ線で、エネルギーが高く破壊力が強いため、放射能毒性が高いと考えられています。
多くの放射性物質はガンマ線という測定しやすいエネルギースペクトルを持っていますが、ストロンチウムが出すベータ線は測定が難しいとされています。日々研究がすすめられ技術も向上していますが、測定結果が出るまでは1週間ほど必要なため、ストロンチウムを地球上に放出しないことが大切になってきます。
ストロンチウムの用途としては、炎色反応で赤色が出るため花火や発煙筒の赤い炎を作り出すために塩化ストロンチウムが使われます。また、高温超電導体の材料としても使われています。ブラウン管などの陰極線管のガラスには炭酸ストロンチウムが混ぜられています。酸化鉄を主な成分とするセラミックなど磁性材料の原料としても炭酸ストロンチウムが役立てられています。