原子番号36:クリプトンの特徴や性質

希ガス

元素番号36はクリプトン、元素記号はKrです。元素名はアルゴンに隠れていてなかなか見つけられなかったため、ギリシャ語の「隠れる」という言葉から命名されました。

常温常圧の状態では、無色・無臭の気体で希ガスの一つです。1898年にイギリスの科学者によって液体空気の中から発見されました。空気より重い気体のため、人が吸い込むと声が低くなるという現象が見られますが、純粋なクリプトンガスを吸引すると酸欠になる恐れがあるため、きちんと酸素が配合されたガスを吸引する必要があります。

クリプトンは空気中に含まれており、空気を液化・分留することで得られます。(他には天然ガス・温泉・火山ガスにも極微量に存在することがわかっています)基本的には不活性ガスですが、フッ素とは不安定な化合物を作り出します。

ウランやトリウムといった放射性物質の核分裂によって、放射性同位体が作られます。クリプトン85は半減期が約10年もあるため、大気中の濃度を調べることによって、放射性核汚染の指標を知ることができます。

クリプトンガスの用途を紹介していきましょう。

◎省エネ照明

電球にはフィラメントの燃焼や蒸発を防止するために不活性ガスが封入されており、長い間そのガスにはアルゴンが使われてきました。ですが、近年はアルゴンに代わって、クリプトンが使われるようになっています。これは、同じ消費電力でもアルゴンよりもクリプトンを使った方が10%以上もランプ効率が上がることがわかったからです。フィラメントの温度を高く維持しながらも電球からの熱損失を抑えることができるのがクリプトンガスなのです。クリプトンガスを利用した電球は「クリプトンランプ」「クリプトン電球」と呼ばれます。

照明としてはカメラのフラッシュやストロボ、車のヘッドライトなどにも使われています。

◎レーザー

短波長レーザーでは、フッ化クリプトンが主流となっています。これは安定した波長のレーザーを発振することができるからです。この特徴を生かして、半導体製造のリソグラフィー・エッチング工程の光源などとして利用されています。

これまで不活性ガスは反応しないと言われてきましたが、クリプトンがその常識を覆しました。

◎省エネ断熱材

北欧など、気温の低い地域では建物内の暖房効率を上げることが社会的な課題になっています。大きな窓があると、放熱性が高くなってしまいますが、そこにクリプトンを封入することで屋内の暖房効率を上げるという工夫がおこなわれています。

これは、クリプトンが重く熱伝導率が低いという特徴を活用しています。今後はさらに連坊効率を上げるため・防音目的でクリプトンガスを利用していくことが増えるのでは、と考えられています。