元素番号26は鉄、元素記号はFeです。元素記号のFeはラテン語の名称にちなんでつけられています。純粋な鉄は白い金属光沢をもっていますが、イオン化傾向が高く水分の多い空気中では簡単に錆びを生じてしまい、外見が黒ずんだり褐色になったりします。このため、日本では古くから「黒い金属」を意味する「くろがね」という呼ばれ方もしていました。
原子番号26の鉄までは、構成の核融合によって作られることがわかっています。原子番号27以上の元素については新星爆発などでしか生じないと言われています。それにもかかわらず地球上で金やプラチナが採掘されるのは、超新星爆発の名残が太陽系の材料になっているということです。
そのため、鉄は太陽を含めてほかの天体にも多く存在します。地球では、地殻の約5%を鉄が占めており、大部分は外殻・内核にあります。地殻以外の部分は鉄が主成分といえるほどの量であるため、火山から出る溶岩や火山岩、熱水鉱床には鉄が多く含まれています。地球が持つ地磁気は地球の核で溶けた鉄分が地球の自転と異なる速度で回転しているために発生していると考えられています。
鉄棒や金属製の手すりなどを触った際に、手に臭いが付き「鉄の臭い」や「金属臭がする」と言われます。ですが、鉄には揮発性がないため臭いの元は鉄のせいではありません。この臭いは人体の汗に含まれている皮脂分解物と鉄イオンが反応してできる有機化合物によるものです。
人類は道具を作り出すために、古くから鉄を利用してきました。現代においても鉄は人類にとって重要かつ身近な金属の一つです。それは安価で手に入れることができ、加工がしやすいという特徴があるためです。鉄の製錬は製鉄とも呼ばれます。その方法には還元反応を利用しており、鉄分を含む鉄鉱石に含まれるいろいろな酸化鉄から酸素を除去して鉄を残しています。アルミニウムやチタンも同様の手法で製錬されますが、鉄は少ないエネルギー量で製錬することができるため、人類が多く利用してきました。
鉄鉱石は地球上のどの地域でも採ることができますが、ロシア・オーストラリア・ウクライナ・中国・ブラジルの5か国だけで埋蔵量の約73%を占めているとされています。それらを品質・コストの面で商業的に操業できるのはオーストラリア・ブラジル・中国・カナダ・インド・アメリカ・ウクライナだと言われています。地面から直接鉄鉱石を掘ることができる露天掘りが可能なことが大きな利点です。
鉄は人体の中でも重要な役割を持っています。血液中のヘモグロビンが鉄イオンを利用して酸素を運んでいるからです。万が一鉄分が不足すると体内の酸素量が減る鉄欠乏性貧血を引き起こしたり、他の疾病リスクを高めたりすることがあります。ほうれん草・レバー・ひじき・海苔・ごまなど鉄分を多く含む食材を意識して摂取することで鉄分不足を改善することができます。