原子番号105:ドブニウムの特徴や性質

遷移元素

原子番号105はドブニウム、元素記号はDbです。元素名については1997年に旧ソ連のドゥブナ合同原子核研究所がある地名・ドブナにちなんで命名されました。

ドブニウムが発見されたのは1970年のカリフォルニア大学バークレー校で、ギオルソらの研究チームの研究によるものです。ですが、1968年から1970年という同じ時期にソ連のドブナ研究所において、リアム・モーランドが新元素の発見を報告しています。

そのため、初めは系統名にちなんで「ウルニルペンチウム」と呼ばれていました。新元素と認められてからはソ連は研究者であるニールス・ボーアにちなんで「ニールスボーリウム」という名称を提案し、アメリカはオットー・ハーンにちなんだ「ハーニウム」という名称を提案していました。結果、1997年にドブニウムという正式名が決められました。(ボーアの名前は107番元素の由来となっています)

105番元素の発見から正式名称の決定まで、30年の歳月がかかりました。ドブナ合同原子核研究所は旧共産圏の中でも原子核研究の中心であり、1954年にヨーロッパで欧州原子核研究機構が作られたことに対抗して1956年にソ連と当時の社会主義国家11か国が共同出資を行って設立されました。現在でも大出力の加速器を使って、多くの超ウラン新元素の発見にかかわっています。こうした功績を考えて、105番元素の命名の元となりました。

元素の名称については、「正式なものでなくても一度つけられた名前は混乱を避けるために付けることができない」とルール化されているため、ハーンの名前が元素名につけられることはなくなりました。

ハーンはドイツのベルリン大学にてマイトナーと共同研究をしていました。その後、マイトナーがナチスによる迫害を避けてスウェーデンに亡命した後にハーンに対して核分裂に関する所見を送ったにもかかわらず、ハーンがその報告を単独で発表することになります。結果、1944年にハーンだけがノーベル化学賞を授与されることになります。

ドブニウムという名称が決まる前にはハーンの名前が新元素名の候補になりましたが、却下される結果となりました。ですが、マイトナーの名前は109番元素の由来となっています。2人の研究者にとって、何とも皮肉な結果になってしまいました。

ドブニウムに安定した同位体は存在しておらず、半減期も最も長いドブニウム268でも29時間となっています。超ウラン元素、超アクチノイド元素ですが物理的・化学的な性質の詳細は不明です。常温常圧の状態では銀白色をした固体であることが推定されています。