原子番号27:コバルトの特徴や性質

遷移元素

元素番号27はコバルト、元素記号はCoです。元素名のコバルトという名称は、ドイツ語でコバルト鉱石が「コーボルト」と呼ばれていたことに由来しています。コーボルトという言葉自体は、妖精の名前だと言われています。コバルト鉱石から純粋なコバルトが産出されにくいのは妖精のせいだ、と考えられていたようです。

コバルトという名前を聞くと、鮮やかなブルーを想像する方も多いと思いますが、常温常圧の状態での純粋なコバルトは銀白色をしており、安定した六方最密充填構造をしています。鉄よりも酸化しにくく酸・塩基などにも強いという特徴があります。さらに磁石になりやすいという特徴もあるため、産出されるコバルトの約4分の1が磁石の製造に使われます。

コバルトは単体としてはあまり広い用途がないのですが、他の金属と合金になることで、幅広い使われ方をしています。ニッケル・クロム・モリブデン・タングステン・タンタル・ニオブなどを添加したコバルト合金は高温の状態でも摩耗しにくく、腐食にも強くなります。そのため、溶鉱炉や石油化学コンビナートで利用されています。鉄よりもさびにくく酸・アルカリにも強いコバルト合金はハサミの素材としても利用されます。

コバルトブルーという名称が一般的なのは、コバルトの化合物からあの鮮やかな青が出るためです。ガラスにケイ酸コバルトを入れると、ガラスが深い青みを持つようになります。アルミン酸コバルトは顔料の原料となり、陶磁器・絵具の元として利用されます。亜鉛との複合酸化物やニッケル・チタン・亜鉛の複合酸化物からはコバルトグリーンと呼ばれる緑色の顔料も作られます。

コバルトがガラスの着色や顔料として使われたのは大変古く、古代エジプト文明やメソポタミア文明の時代と言われています。

現在、コバルトの産出国としてはコンゴ・カナダ・中国・ロシア・ザンビア・オーストラリアなどが挙げられます。リチウムイオン電池の製造にコバルトが不可欠であるために、コンゴでは児童労働がおこなわれていることが問題になっており、現在はコバルトの使用量を減らしたリチウム電電池の開発をしたり、児童労働がおこなわれている鉱山からのコバルトを購入しないという動きも見られるようになりました。

天然に存在しているコバルトはコバルト59ですが、人工的にコバルト60を作り出すことができます。コバルト60はガンマ線という強力な放射線を放出するため、兵器としてコバルト爆弾が開発されていたこともあります。ですが、被爆後のコバルトの半減期が長く、味方にとっても不利になることがわかったため、実際に兵器としては使われずに済みました。現在、コバルト60は医療・農業の分野で利用されています。