原子番号24はクロム、元素記号はCrです。元素名については、クロムが参加することでいろいろな色になることからギリシャ語の「色」を意味する言葉にちなんで名づけられました。クロムという呼び名以外に「クロミウム」という別名もあります。
常温常圧の状態では銀白色の硬い金属です。1797年にフランスのルイ=ニコラ・ヴォークランによって発見され、翌年にはルビーの赤い色・エメラルドの緑色が酸化アルミニウムにクロムが不純物として含まれていることが影響していることがわかりました。
ところが、秦の始皇帝の時代(紀元前221~210年)の出土品である青銅の剣・矛・弓矢などにはクロムメッキが施されていたこともわかっています。これらの出土品は2000年以上の時を経ても錆びた様子がないまま発掘されましたが、秦の時代の古文書には加工についての記述が残っておらず、現在でも大きな謎のままとなっています。
金属としてのクロムは、光沢があり硬く耐食性に優れています。その特徴を生かしてクロムメッキとして用途が多いです。クロムメッキと聞いてもあまりなじみがない方も多いでしょう。
ですが、クロムは普段私たちの生活でいつも利用しているステンレスに含まれていて、大きく役立ってくれています。ステンレスは鉄・ニッケルに10.5%以上のクロムが含まれた合金です。ほとんど錆びを発生させないという点を生かし、電車や車・機械などの重工業製品から流し台・包丁といった台所用品まで幅広く使われています。
ミネラルとしてのクロムは、人間にとって必須の栄養素としてその価値を見直されているところです。クロムが体内で不足すると、糖の代謝異常が起こってしまい糖尿病が発症する可能性があることがわかっています。インスリンがレセプターと結合することを助ける働きをする「耐糖因子」を構成するための材料として3価クロムが役立っています。
一般的な食事を摂っている限り、クロム不足に陥る心配はありませんが、クロムが多く含まれている食材としては刻み昆布・きくらげ(乾燥)・干しひじき・黒砂糖・落花生・油揚げ・そば・真さば・あわび・牡蠣・あさり・豚ロース・鶏モモ肉などが挙げられます。
クロム単体・3価クロムには毒性がなく、ステンレスなどに利用されています。ですが、6価クロムは毒性が高く、以前は6価クロムがメッキに利用されていたこともあり土壌汚染問題に発展したこともあります。また、4価クロム化合物には発がん性があるとWHOの下部機関が勧告しています。さらに、タバコに含まれる発がん性物質の一つとしてもクロムが挙げられています。