原子番号5はホウ素、元素記号はBです。ホウ砂に含まれていたことから発見されたため、アラビア語の「ホウ砂」を意味する「ブラーク」という言葉から命名されました。ホウ砂自体は「白い」という単語にちなんでつけられていますが、ホウ素は単体の状態では黒い固体なので、矛盾が生じてしまっています。
ホウ素は高融点・高沸点で硬い物質です。金属元素と非金属元素のちょうど中間の性質をもっているため「半金属」に分類されています。原子番号が小さな元素ですが、宇宙規模で見ても存在数が少ない元素となっています。
地球上の存在率も低いのですが、ホウ酸塩という形で鉱床を作っているので、採掘することができます。ホウ素鉱石が取れる鉱床としてはアルプス・ヒマラヤ造山帯、アンデス山脈、トルコの中部から西部などがあります。人類が技術的に採掘できるホウ素鉱石は全世界で約2億1,000万トンあると考えられています。
ホウ素は単体で使われることは少なく、化合物・合金といった形でいろいろな場面で活用されています。
世界中で消費されているホウ酸塩の約6割がガラスに関係する用途に使われています。ガラスにホウ素を加えて作られるホウケイ酸ガラスには5~30%の酸化ホウ素が含まれています。ホウケイ酸ガラスは熱膨張率が低く、熱衝撃への耐性が高いという特徴があります。また、ホウ素をガラスに加えて溶融状態にするとガラスの流動性が増すため、成型して作られるガラス製品の生産性が向上します。こうして作られたガラス製品は実験用のガラス器具(ビーカー・試験管など)や一般家庭でも使われる調理器具・耐熱皿として使われています。
ホウ素は密度が小さく音の伝わる速さがアルミニウムのおよそ2.6倍以上のため、音響材料としてベリリウムよりも優れた素材となっています。ですが、融点が高く展延性が低いため加工が難しく、実用化されるまでに長い時間がかかりました。
永久磁石の一つであるネオジム磁石を作るには、ホウ素が不可欠です。ネオジム磁石の中のホウ素は約1%ですが、重要な元素のひとつとなっています。ネオジム磁石は医療用の画像処理システム(MRI)や電動機、ハードディスクドライブやCD・DVDプレイヤーなどにも使われています。携帯電話やスマートフォンのスピーカーを小型化するためにもネオジム磁石が使われています。
一般的によく知られているホウ素の利用方法としては「ホウ酸団子」が挙げられます。ホウ酸の濃度は10~50%と商品などによって異なりますが、玉ねぎ・米ぬか・じゃがいもとホウ酸を混ぜることでゴキブリ駆除剤として活躍しています。また、アリの駆除にもホウ酸液が使用されることもあります。