原子番号95:アメリシウムの特徴や性質

アクチノイド

原子番号95はアメリシウム、元素記号はAmです。元素名については、周期表でアメリシウムの上に位置するのがヨーロッパ大陸にちなんで命名されたユウロピウムだったことから、アメリカ大陸にちなんで命名されました。

常温常圧の状態では銀白色の放射性の金属で、六方最密充填構造の安定した結晶構造をしています。融点が995℃、沸点が2600℃で、展性と延性があり希酸に溶けるという特徴があります。また、剥離性があり空気中に置いておくと白く曇ります。化学的な性質はユウロピウムに似ています。

アメリシウムは天然には存在しない、人工元素となります。地球が形成された際に存在していた可能性もありますが、最も半減期の長いアメリシウム243の半減期が7370年のため、当時のアメリシウムは崩壊してしまっています。現在、大気中などで観測されるアメリシウムはチェルノブイリの原発事故のような原子力事故現場、1945年から1980年の間に大気圏核実験が行われた地域、核燃料再処理施設がある周辺に集中しています。

1952年にアメリカで初めて水素爆弾アイビー作戦マイク実験が行われた地点で回収された破片からは、高濃度のアメリシウムが検出されました。ですが、軍事機密として取り扱われたため、この事実が公表されたのは1956年でした。

アメリシウム自体は古くからの核実験などで生成されていたと考えられていますが、初めて意図的に合成・単離されたのは1944年のことです。カリフォルニア大学バークレー校でアメリカの化学者グレン・シーボーグなどが携わりました。原子炉内でプルトニウム239に2個の中性子を当てるとプルトニウム241になり、プルトニウム241がベータ崩壊をすることで半減期432.2年のアメリシウム241が生成されます。超ウラン元素としてはネプツニウム・プルトニウム・キュリウムに次いで4番目の発見となっています。

アメリシウムとキュリウムの発見についてはマンハッタン計画に関連していたことから、1945年まで機密情報として公開されていませんでした。

アメリシウム241はアルファ線の放出が高く、ガンマ線のエネルギーが低いことから低エネルギーガンマ線源として蛍光X線分析装置などに使われます。さらにアメリシウム241から放出されるアルファ線を利用した煙探知機や厚さ計に使われています。

アメリシウム242は中性子ラジオグラフティーの中で使用されます。ベリリウムとアメリシウムの混合物は中性子源・放射線源として使われます。