原子番号115はモスコビウム、元素記号はMcです。元素名については、ロシアのドブナ合同原子核研究所が位置するモスクワ州にちなんで命名されました。
2003年8月にドブナ合同原子核研究所でロシアとアメリカの科学者の合同チームが初めて生成に成功しました。2004年2月に科学誌にてアメリシウム243とカルシウム48を衝突させることでモスコビウムの原子を4つ生成されたことが報告されました。
また、モスコビウムの最終崩壊生成物であるドブニウム268の化学実験からモスコビウムとニホニウムを発見したことの主張を強化しました。しかしながら、この実験を裏付けるデータを得ることができず、2004年6月と2005年12月に最終崩壊生成物の生成や自発核分裂の測定、第5族元素としてふるまうことが化学的にわかったことで、ドブニウム同位体の存在が確認されました。ドブニウム268の半減期と崩壊モードがわかったことで、モスコビウムも確定するに至りました。
それでもなお、理論的に十分な信頼性をもって第4族元素と第5族元素の化学的な性質が区別できなかったため、2011年の時点でモスコビウムとニホニウムの発見が認められることがありませんでした。
2013年8月にスウェーデンのルンド大学とドイツの重イオン研究所の研究者のチームが2004年の実験を再現することに成功し、ドブナ合同原子核研究所のモスコビウムの発見を裏付けることに成功しました。同時にドブナ合同原子核研究所でも2004年の実験を再現することに成功し、2015年にはアメリカのローレンス・バークレー国立研究所によっても確認がされました。
これらの経緯を経て、2015年12月になって国際純正・応用化学連合と国際純粋・応用物理学連合の合同作業部会によって新元素として正式に認定されました。
正式な名称が決まるまでは、メンデレーエフの命名法によって「エカビスマス」と呼ばれており、暫定的に「ウンウンペンチウム」とも呼ばれていました。モスコビウムという名前に決まるまでは、フランスの物理学者ポール・ランジュバンにちなんだランジュビニウムという名前が提案されたこともありました。
モスコビウムは放射性がとても強く、同位体の中で最も安定したモスコビウム290でも半減期はわずか0.8秒しかないため、詳しい化学的な性質はわかっていません。ただ、化学実験が可能な半減期を持つ同位体が存在しているため、今後も研究が進められていくことは間違いありません。