原子番号49はインジウム、元素記号はInです。元素名についは、発光スペクトルが濃い藍色だったことからIndigo(インディゴ)を由来として命名されました。
常温常圧の状態では銀白色をした金属で、柔らかいという特徴があります。薄い板状になっているものであれば、人の手で簡単に形を変えることができるほどの柔らかさです。安定した結晶構造は正方晶系で、融点が約156℃と金属では低い方です。酸には溶けるけれど塩基・水とは反応しないのも特徴です。亜鉛を製錬する過程の副産物として生産される、レアメタルの一種です。
酸化インジウムスズ(Indium Tin Oxide=ITO)は導電性があるにもかかわらず透明であるため、液晶やプラズマのディスプレイに使用されます。電気信号を他のピクセルからの光を阻害することなく伝達できるため、スマートフォンやテレビの画面に使われています。
インジウムとリンの化合物であるリン化インジウムは、高輝度のLED用素子に使われており、空港のランプ・車のヘッドライト・信号機などで使われています。
日本はかつてインジウムを世界一産出していた国でした。その鉱山は北海道札幌市にあった豊羽鉱山です。資源としては豊富でしたが、採掘する場所が奥まるにつれて採掘に関する費用が莫大になるという問題から、豊羽鉱山は2006年3月末で閉山となりました。その後は中国が世界最大の生産国であり輸出国となっています。
インジウムを世界で一番消費しているのは、かつての産出量が世界一だった日本です。豊羽鉱山が閉山となった後も消費量は多く、現在は世界中のインジウムのうち約8割の量を日本が輸入しています。現在は中国の亜鉛工場がカドミウムによる公害問題を起こしたため、輸出や加工の委託も行われておらず、リサイクルによってまかなえるよう日々研究されています。
日本のインジウム輸入先としては、中国の他には韓国・カナダ・台湾などがあります。
1990年代半ばまで、インジウムについては安全な金属と考えられていました。ところが、2001年4月に間質性肺炎で亡くなった男性がITOを用いた研磨作業に従事していたことが判明し、ITOを取り扱う作業者の中に間質性肺炎を発症する人が多いことがわかりました。その後の研究により、リン化インジウムに発がん性があることが判明し、その他のインジウム化合物についても強い肺障害が現れることがわかっています。
このことから、日本では2010年12月に厚生省がインジウム・スズ酸化物などを取り扱う作業についての健康障害防止対策が通達されています。