原子番号43はテクネチウム、元素記号はTcです。元素名は1947年にギリシャ語の「人口」を表す単語をもとに命名されました。
長い間、周期表の中に空欄があり、19~20世紀初めにかけて多くの研究者がこの元素を発見しようとしていました。1828年に43番元素と発表されたものは不純物が混入したイリジウム、1846年に発表されたものは不純物が混入したニオブ、といったことが繰り返された歴史があります。その後1936年に初めて人工的に元素が作られたものが43番元素であり、1957年にアメリカの天文学者であるポール・メリルによって赤色巨星にテクネチウムが存在することが観測されたことで確定しました。
テクネチウムは常温常圧の状態では白金に似た見た目をしている銀白色の金属ですが、製造と保管は粉末の状態で行われます。放射性とわずかな磁性があり、安定した結晶構造は六方晶系となっています。
天然のものとしては恒星のスペクトル線から存在が確認されており、テクネチウムを持つ恒星は「テクネチウム星」と呼ばれます。地球上では初めは存在されないとされていましたが、近年は天然ウラン鉱の中に自発核分裂の生成物として微量が存在することがわかっています。このため一般的には自然・天然では存在しない元素として知られています。
テクネチウム99には人体の中に注入することができるという特徴があります。テクネチウム99は半減期が約6時間であり、人の体内ではガンなどの組織に吸着しガンマ線を放射します。これらの特徴を生かして、骨・腎臓・肺・甲状腺・肝臓・脾臓などの画像診断をするために利用されています。具体的には血流測定剤・骨イメージング剤・腫瘍診断剤などの放射線診断薬に使われています。
体内に入ったテクネチウム99は24時間以内に尿として約3割が排出されることがわかっていますが、テクネチウム99自体の半減期が約6時間のため、実際に尿から排泄されるテクネチウム99の量はもっと少ないとされています。
テクネチウム99はモリブデン99が壊れることで人工的に生成されます。そのため、世界各地の原子炉で生成されるモリブデン99の量によって、テクネチウムの供給量が左右されることになります。現在はオランダ・カナダ・南アフリカなどで製造されています。日本では作られておらず、フランスなどからの輸入に頼っています。
テクネチウム99を含んだ薬剤による検査は、日本ではたくさんのデータがありノウハウも蓄積されています。ですが、テクネチウム99の製造を輸入に頼っているため、海外で原子炉の緊急停止や事故などが起こると供給量が減り、国内での検査に影響が出てしまうこともあります。