原子番号93はネプツニウム、元素記号はNpです。元素名については、海王星の「neptune(ネプチューン)」が由来となっています。元素記号のNpは過去にニッポニウムという名付けられた元素に使われたものと同じになっています。(ニッポニウムはその後確認されず却下され、ニッポニウムという名前自体が使用できなくなっています)
常温常圧の状態では銀白色をした展性・延性の高い金属で、斜方晶系の安定した結晶構造を持っています。280℃付近から結晶構造が正方晶系になり安定し、580℃付近になると体心立方構造で安定します。
1934年にイタリアの物理学者エンリコ・フェルミたちのグループがいろいろな物質に中性子を当てる実験を行っていました。そのような中でウランから生じたある核種が93番元素の可能性のあることがわかりました。その後、いろいろな学者が詳しく調べたところ、ベータ崩壊がみつかり93番から97番元素までの合成が進んでいた可能性があることがわかります。
1938年の末になってこれらのベータ崩壊がウランの核分裂によって生じた放射性同位体に由来することがわかりましたが、93番元素の可能性は否定されることがありませんでした。
19740年には日本の理化学研究所がウラン238から中性子を1つ取り除き、ウラン237を合成する実験を行っています。このベータ崩壊が確認できたことからネプツニウム237が生じたこともわかり、物理学者の仁科芳雄が93番元素の存在をより濃厚なものにしました。しかしながら当時の理研の技術では単離するまでに至らず、ネプツニウムの発見とまでは言い切れなかったのです。
1940年の末にはアメリカの化学者マクミランとアベルソンがウラン238に中性子を当てて、ネプツニウム239を生成することに成功しました。この時はネプツニウムの単離に成功したため、初の人工的に作られた超ウラン元素として認められることになりました。
あと少しのところで、日本人が新元素の発見にかかわるところでしたが、ニッポニウムに続き、認められることがありませんでした。
ネプツニウムは安定した同位体を持たず、多くの放射性同位体があります。天然にはウラン鉱石の主な成分であるウラン238が放射性壊変したことで生成されたネプツニウム239が微量に存在しています。
ネプツニウムの用途としてはプルトニウム238の製造をするために使われます。核分裂性のあるネプツニウムは理論上、原子力燃料として使用できることがわかっています。実際、1992年にはアメリカのエネルギー省がネプツニウム237が核起爆装置のために使用できるという情報を解禁しています。現時点では核兵器の製造に使われているという報告はありません。